夢100 創作

□吸血姫A
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朝目を覚ますとそこは見慣れない天井。

「………………」

王子様を襲おうとした吸血鬼が拘束するわけでも監視する訳でもなく贅沢な一人部屋を用意されている。

「…………準備しなきゃ」

あんなことがあったのに雇ってくれたのだ
こちらも信頼には誠意で応えよう

と考えて用意されていた変装用のウィッグを被って感心する。

「ウィッグだけでもだいぶイメージ変わるなぁ……」

見慣れぬ姿に違和感を覚えながらも、身支度を整えたシェミは緊張した面持ちで扉を開けた。
なんとか今はウィルと顔を合わせずに済んだがこれも時間の問題。
彼の秘書をする以上顔を合わせないわけには行かないと思うとゾッとした。

「…………待って秘書って…」

ウィルを起こしたりはしなくていいのだろうか?
秘書=雇用者のスケジュール管理のイメージがあるシェミはそんなことを考えて動きを止めた。

「嫌でもこんな時間だし起きて……るよね?」

なんとなく不安になったシェミはとりあえずノックだけしておこうと思いウィルの部屋の扉を叩いた。

「ウィルー!起きてる?」

そう言って十数秒後扉が開いた。

「誰」

「え」

「……あ、ごめんシェミか…………えらく血色のいい女の子がこんな時間に来たから……」

「……は?」

「にしてもウィッグするだけでだいぶイメージ違うね」

ウィルの姿を見ないように、と思っていたのにあまりにも意味不明なことを言われてシェミは顔を上げてしまった。
目に入るのはその綺麗な首筋。

「なに?」

「……服、着なさいよ」

「ああごめん」

この人は本当に危機感皆無なのだろうか。
というかどんな姿で寝ていようが自由だが、上半身裸などではなく、シャツくらい羽織って出てくるべきではないだろうか。

「ーーもう、早く中入って」

「わかったよ。
準備してくるから」

そう言ってウィルが扉を閉めた途端シェミの中の衝動が治まっていく。

「…………」

まずい胸がドキドキして……苦しい
昨日吸血したというのに衝動が起きるということはやはり定期的に起こる現象なのかもしれない。
吸血行為が必要だとするのなら必要最低限、限界まで我慢しようと心に誓いシェミはウィルの支度が済むのを待つ。

「お待たせ」

「では参りましょう」

「別にタメ口でもいいけど?」

「一国の王子の秘書なのですから最低限のマナーは守ります」

そう言うと彼は面白そうに笑って“そう”とだけ返した。
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