声が枯れるまで〜貴方のために詠い続けよう〜(第二部)(完結)

□第十話
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エースside


ランが食堂を飛び出した


ランがこの船で行ける所は限られている


自室、オヤジの部屋、食堂


自室にはいなかった


オヤジの部屋にはいるはずがない


となると・・・


「やっぱりここか」

時々人がいない時に出ている甲板の隅

人目に付きにくい場所

そこで顔を膝に埋めて小さくなっているラン


隣に座る


俺はマルコみたいに頭が良くないし、サッチみたいに上手く喋れない


だから隣に座る


俺にはそれしかできない


少しだけ肩が触れる場所に座る


ランに孤独を感じてほしくなくて・・・


どれくらいそうしていただろうか



「エース・・・」

ランが顔を上げた

その目は赤く、虚ろだ


「ん?」


出来るだけ何でもないように返事をする



「・・・・・・探してたなら・・・なんで早く迎えに来てくれなかったのかな」


ランはポツリポツリと話し出した



「母さんが死んだのは5歳の時だった。その頃はね・・・父親を嫌ってなかったの・・・いつか迎えに来てくれるって思ってた。海賊なんて知らなかったしね・・・」


「母さんはいつも言ってた。私の父親がどれだけ素晴らしい人かって、とっても素敵な人だって・・・だから・・・」


ランも父親に憧れていた・・・と


「母さんが死んだあと、村で私達の世話をしてくれていた村長さんが母さんの手紙を見つけたの。そこに父親が白ひげだと書いてあった。だから、最初は父親を探そうとしていたのよ・・・」


ランの声には何の抑揚もない


「でもね、その前に私・・・売られたの・・・」


「!!!!!!!」


驚いて声も出なかった


「村長さんがね・・・売ったみたい。白ひげの娘だと・・・一番高く買ってくれた海賊に売ったみたい」


俺は拳を握りしめた


そいつが許せなかった


それからの事を淡々と話すラン


海賊に売られたが、別の海賊に偶々助けられ、別の島で1人で生活しながら時々その海賊が戻って来て助けてくれたと


それでも、そんな生活は長く続かず、こんどはその海賊と繋がりがあるという事で別の海賊に狙われ・・・


逃げても、どこかで白ひげの娘とバレるんじゃないか・・・と怯えながら・・・


実際、子供の頃は信用してしまった大人に何回か話してしまって裏切られて・・・


最近まで点々としながら1人で生きてきた・・・と


俺は思わずランを抱きしめていた


「ずっと・・・ずっと1人だったの。今の仲間たちに出会うまで・・・ずっと逃げてきたの・・・あいつのせいだと思ったわ。母さんの最後を看取ってくれなかったあいつも、母さんを助ける事が出来なかった私も・・・全部が憎いのよ」


俺の背中に回ったランの腕に力が入る



「なのに・・・探してたって・・・なんで・・・なんで・・・」



ランは静かに泣いていた



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