声が枯れるまで〜貴方のために詠い続けよう〜(第一部)(第二部へ続く)

□第五話
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早朝

革命軍本部へと向かう船から聞こえる声


見知らぬ少女が甲板で歌う姿に声をかけるのも忘れ聞き入る見張り役



『海の声が 聞きたくて
風の声に 耳すませ
海の声が 知りたくて
君の声を さがしてる

空の声が 聴きたくて
風の声に 耳すませ
海の声が 知りたくて
君の声を 探してる

会えない そう思うほどに
会いたい が大きくなってゆく
川のつぶやき 山のささやき
君の声のように 感じるんだ

声に出せば 届きそうで 今日も 歌ってる
海の声にのせて

海の声よ 風の声よ
空の声よ 太陽の声よ
川の声よ 山の声よ
僕の声を 乗せていけ

海の声が 知りたくて
君の声を 探してる』






銀髪の長い髪をたなびかせ、甲板で気持ち良さそうに詠うのは昨夜サボによってこの船に連れて来られた少女

昨夜サボたちに話した事を思い出しながら詠っていた


このままこの船に乗って、革命軍の本部まで行っても良いのだろうか・・・と



昨夜サボとコアラに話した事



少女の父親の名

四皇 白ひげ エドワード・ニューゲート


そして、レイラと言う名は偽名である事

本名はラン

エドワード・ランである事を正直に話した


ランがサボとコアラに正直に話したのは2人を信用した事と、この船から降ろしてもらうためだった


大っぴらにはされていないがランの存在は一部の賞金稼ぎと海軍上層部に知られている

今までも何度か狙われたことがある

このまま一緒にいるとサボやコアラを巻き添えにしてしまうかもしれない


ランはそう考えて全てを話した

そうすればこの船から降ろしてくれると考えたのだが・・・




「朝からお前の歌声が聞けるのは贅沢だな」


ちょうど歌い終わった頃を見計らって声をかけたのは・・・


「サボ・・・さん」


「サボで良いって昨日言っただろ?敬語もなしな?」

そう言って笑うサボに溜息を吐くラン


「・・・サボ、やっぱり・・・私・・・」

この船から降ろして欲しいと言おうとしたが・・・


「この船から降りるっていうのはなしな?」

先に断られたラン


「・・・でも・・・」

「俺たちと一緒にいるのはイヤか?」


それだったらしょうがないけどなぁ〜と少し残念そうな顔をするサボ


ここでイヤだと言えば降ろしてもらえる


サボたちの事を考えるのならここでイヤだと言うべきだ

そう言おう・・・と


そう思って口を開いたランだが・・・


ウソでもサボやコアラの事がイヤだと言えない




「・・・ラン、1人辛くないか?寂しくないか?」




「・・・・・・・・・・・・・・・・」



5歳の時に母親が死んでからずっと1人だったラン


子供の頃は人を信用した事もあった

だけど何度も裏切られた


そのうち誰も信用できなくなったラン

裏切られるくらいなら1人で居る事を選んだ

ずっとずっと1人だったラン


「ラン・・・」


ランの本当の名前を優しく呼ぶサボ

そして、ランの綺麗な銀色の髪へと手を伸ばし、頭を撫でる


驚くほど優しいサボの手

これほど温かく優しい手は母親以来




久しぶりに触れた人の温かさ

それを振りほどく事をランには出来なかった




「サボ・・・寂しかった・・・ずっと1人で辛かった・・・の」


「あぁ・・・」


分かるよ・・・とサボは優しく優しくランを撫で続けた


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