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□に
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様子を眺めていると、高校生らがボール欲しさに中学生らに試合を吹っ掛けた。
「え、野試合禁止じゃねぇっけ」
旭が至極真っ当なことを景さんに聞く。
「禁止。……だけどこりゃ他のコーチらも様子見してるだろうから誰も止めないだろうね」
そう言いながら監視カメラが人が集まるコートの方にレンズを向けているのを指さした。
「あ、二人も見てく?今の中学生のテニス。……参考にはあまりならないだろうけども」
提案する景さんの顔はもうコーチの顔だったのできっとこれも練習の一環としての案だろう。
「俺はどっちでも」
「あ、じゃあ見てきたい!噂の人外中学生のテニス一回くらいみてみたいし」
じゃあ決定だね。三人して試合を見るために手すりのすぐ近くを陣取った。
最初は遅れてやってきた少年が相手らしい。
それに対して相手は佐々部、ではなく……えーと、
「あ、ちーちゃんだ」
「やけに可愛いあだ名だな、おい」
ちなみに旭は去年ずっとハゲ帽子って呼んでた。まんまだよね。
「つーか去年のと帽子違うくね?去年はたしかベレー帽じゃなかったっけか、よく落としてたよな」
「どっちにしろなんで落ちやすそうな帽子を選ぶんだろうね。コーチとしては注意したいところだけど……」
やっぱ従姉弟だけあって似てるなぁ、この二人。
「てかさー、ちーちゃんと言ったらあれだよね」
「マグナムッ!!」
ちょうど良いタイミングで叫んでくれた。
ここの選手は何かと技名(笑)を叫ぶ傾向があるようで。
いや、まだちーちゃんはいい方だ。
もっと凄くて笑えるのがある。
「お、あの小さいやつマグナム返したぞ」
二回目のサーブで親友の言う通り、少年が打球を返した。
「見切るのが上手いんだよね、あの子」
「ん?景さん知ってるの?」
「うん、今年の中学の大会の優勝校があの子の学校でね。立海大付属の幸村って子知ってる?その子と試合して勝ったんだよ」
「「マジで?」」
立海大付属と言えば去年まで関東大会15連覇、全国大会2連覇というテニスの強豪校だ。
今年で三連覇の夢が崩れた、というのはメディアで聞いたがそう言えばその立海に勝った学校は知らなかった。
……思えばそれもあの転校生が騒ぎを起こして忙しくなったせいだ。
ほぼ八つ当たってる?気のせい気のせい。
と、話を戻すと。
立海付属の現部長の幸村って子はよくわからんが「神の子」と呼ばれるほど強いらしく。
立海の天辺、つまりは中学生テニスで頂点と言ってもいいくらい。
そんな選手を負かしたらしい、あの少年は。
「はぁー…正しく下剋上、ってやつ?」
感嘆混じりに呟きながら視線をコートに戻したら、ちーちゃんが鼻血を流して倒れ、少年が勝ち誇った顔をして「まだまだだね」、そう言った。
「What's happened ?」
「「あー、やっぱ帽子落ちた」」
「つーかお前は何故英語だし」
うん、やっぱこの二人似てるわ。
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