B


□に
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黒部に合宿所に呼ばれた。

呼ばれた理由の一つは見当がついてる。おそらく今年も、私以外のコーチの言うことを聞かない二人のメイン指導だろう。

「……ぶっちゃけあの二人はもう指導することないんだけどなぁ」

まあ、私が練習相手になってやるか。






駐車場に車を置いて、黒部がいるだろうモニター室に向かう。
やや風が冷たいが寒いなどとはこの合宿所では無縁だろう。

「おや、来ましたか」

「お久しぶりです」

お辞儀はしないものの、丁寧にあいさつをするのは実は私を指導者として雇うことを監督に推薦したのがこの人だから。
ちなみに会計職は監督から貰った嬉しくもないオプションである。

「あれ、」

ふと正面の16面コートを映すモニターの一つを見ると、やたらカラフルな頭とジャージを着た少年らがいた。

「黒部さん、彼らは?」

「あぁ、そう言えば君はまだ知らなかったね。1軍20名が韓国遠征で不在の間、2軍248名の合宿に中学生選抜を50名加える事になったのです。」

言い終えると、黒部コーチは紅茶の入ったティーカップを口元にもっていく。
私は紅茶のにおいが苦手なもので、思わず後ろに一歩引いたが誤魔化して口を開く。

「中学生ですか?なんでまた……」

「近年の中学生テニスはレベルをあげてますし…、君は今年の大会を見たはずでしょう?」

「あー……まぁ、はい」

黒部コーチの真っ直ぐすぎる目から、つい目を逸らす。

「確かに凄かったです、本当にいろいろと……」

数か月前に見た大会のことを思い出す。
確かに凄かった、目をひん剝くほどに。
最近の若者の人間離れを心配するほどに。


その大会を見てただ一言思ったことは
「ちゃんとテニスをやれ」
であった。

そうだ、あれはテニスと言わない。テニヌである。
似て非なるもの。

そう自分に言い聞かせたことも記憶に新しい。


「そうだ、主に高校生指導担当の君でも余裕があったら指導をしてみればいい」


サイヤ人かクリリンになれ、ということなのだろうか。



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