08/12の日記

18:39
教師×生徒会長 (教師視点)
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約束は永遠。
守り通せばそれは、――――



【運命さえ奪いたい】



―――運命だ。
壇上の君を見ただけで高鳴る鼓動。釘付けになる視線。全身が君を欲していて、溢れそうになる涙。

「うそだ...」

こんなのは自分じゃあない。知らない。
高鳴る鼓動?何それ。釘付け?そもそも誰よアレ。
てかその前に、運命なんか信じない。
てか!!その前のその前に、――――。

「アレは生徒だし!?」
「うっせえぞ!そこのバカ!」
「だまれっハゲ!」
「ハゲてねぇよ!この薄らハゲ!」

『そこ教師二名煩い!!!』

・・・今日は厄日か。




―カッカッカッ。

「あー、今日からこのクラスを担当する葉山だ」
「センセー下の名前はぁ?」
「知らん」
「えー?」

ここの教師になって早3年。
ここの学園の新入生は可愛くないと俺は知っている。

「先生なんだから新入生可愛がってよ〜」
そういう絡み方は可愛げのある奴がやる事じゃあないわな」
「つか、俺らに可愛げ求められても〜」

求めてねぇよ。
可愛げのある奴がFクラスにそもそもいるわけがない。

「さ、黙れ黙れ。さっさと仕事して帰るぜ俺は」
「わぁ、職務放棄だ〜」

馬鹿め、仕事はするっつってんだろ。



*****



「何故俺は教師になったんだろうか」

仕事を終えて夕食を摂りに食堂へ。
いつも思っている事ではあるが、思わず口に出してしまうくらい今日は一段と騒々しい。
新入生にとったら、今日が1日目の高校生活だからはしゃいでしまうのはわかるが。

「葉山センセ、一緒に食べよ〜よ」
「また今度な」
「センセ冷たい〜」

何故教師も生徒と同じ場で食べねばならないのか。
一応教師専用の机が用意されてはいるが、同じ空間なのは変わらないからあまり意味がない。

「よっこいせ」
「相変わらず可愛い生徒に人気があって羨ましいな、葉山センセ」
「黙れハゲ」
「禿げてねぇっつってんだろ、薄らハゲ」

...本当に、何故。

頼んだ食事が運ばれて、さぁいざ補給するかという時。
ザワザワレベルで騒がしかった食堂がライブ会場並みに熱狂に包まれた。

「おっと、おでましか」

斜め前から聞こえてきた言葉に、俺は顔を上げないまま手を止めた。

――しまった、

普段はこんな時間に食堂になんて来ないじゃないか。
だから今の今まで、顔を見ずに済んでいたのに。

「...おいハゲ、耳栓か耳栓持ってないかハゲ」
「持ってはいるが、ハゲを連呼する奴には貸さん」

最近気づいた事、顔を見るとアウトなのは勿論だが、声もダメだ。
ここまで来ると自分でも異常だと自覚した。

「何でもいい!貸せ!すぐ貸せ!」
「はぁ?何焦ってんだテメェ」

1年間だ。
1年間努力したんだ。
それがなかった事になりそうな状況で焦らずにいられるほど、俺は楽観的ではない。

「いいから貸せ――」

思わず馬鹿ハゲに手を上げようとした時、またしても絶妙なタイミングでライブ会場が爆発した。
耳をつんざくような絶叫がその場を支配する。

「っんだ、今度は!?」

これには思わず手で耳を覆って振り返った。

――さて、早いが結果を言おう。

「おーおー、派手にやってんなぁ」

ハゲの言葉が風と共に通り過ぎていく。
あぁ、俺の中に留まる全てが、そいつの情報だけになる。
視線は勿論、拾う音さえも。

結果として、やはり見てはいけなかった。

――あいつの顔が少しだけ歪む。

そんな表情だけでも釘付けになる。

――あいつの唇が少し引きつった音を出す。

あぁ、その少しの変化でさえ敏感に感じ取ってしまう。


俺が、
俺でなくなる―――



「...その汚い手を離せ、黒マリモ」



だが、俺を動かしているのは紛れもなく俺自身で。
あいつを求めているのも、全て俺なのだ。



 

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