記憶がなくても…俺達は

□粟田口
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蝉が鳴いている。
真夏で太陽の日差しが強くて暑い。

蝉の鳴き声のコーラスの中、道場内では二人が剣を打ちつけていた。


「はぁぁぁぁぁ」

ガキンと刀が音を立てる。

「骨喰こんなんで俺を倒せるとでも
思っているのか…?」

そして一つ結びにした一人の美少年
らしからぬ姿の少年がニヤリと笑い

「まだまだ…甘いね!」

そして相手を押しのける。


「グッ!」

こちらも美少年だけれども髪の色は銀髪で
肩まである髪に汗がべたつく。

息が荒くなる。

(なんでこいつはこんなに余裕なんだ?)


ヘッヘーンと肩に刀を持っていき
清々しい笑顔をしている。

まるでさわやか少年。


「あれれ?骨喰くぅ〜んもう終わり?」


「まだまだぁ!」


またカキーンと剣と剣がぶつかる。

「そうこなくっちゃ♪」



剣と剣がぶつかり合う中、道場の入り口
で一人腕を組んでフフフと笑っている
好青年がいた。

髪の毛は水色で服装も派手だ。
町中で出会ったら絶対に振り向くその姿
は美しい。


「鯰尾も骨喰も腕をあげましたね。でも
、鯰尾あまり油断しすぎると…」



「くらえ!」

銀髪の髪をした骨喰藤四朗が黒髪で一つ結び
にしている鯰尾藤四朗に突きをお見舞いする。


「うわ…!あぶね〜な。いくら昔は薙刀
だったからだなんてそんなの卑怯だぞ」


「ふん…勝てばいい」


「お前な〜」


そんなやり取りを見ていた服装が派手な好青年が吹きだした。


「あ、いち兄!」
鯰尾は服装が派手な好青年に気付く。

「内番ちゃんとやってるみたいだね」
笑顔が素敵ないち兄と呼ばれた好青年は鯰尾に
近づく。


「あ、どうも…」
骨喰はいち兄にペコリとお辞儀をする。


「いちにぃぃぃ」
鯰尾はいち兄に突然抱きついた。


「いちにぃぃぃ〜今度はいち兄と居合いを
したい〜」


(な…)
骨喰は突然鯰尾がそんなこと言い出したから
胸がチクリとした。


「ははは、でもそういうのは審神者の紅葉
さんが決めることですよ」
と、いち兄は鯰尾の頭をわしゃわしゃする。


「でも…俺はいち兄がいい。たまにはいち兄
と居合とかしたい」


「この前、一緒に畑仕事したでしょう?」


「あれは春だった」


骨喰は言葉を遮る。
「おい、鯰尾。一期一振さんも最近は出陣とかで新たな開拓地の攻略で忙しんだぞ」


「じゃあ、俺も出陣したい」


「お前じゃすぐに破壊される」


「なんだと!骨喰!」


二人はキッとにらみ合う。

「まあまあ二人とも落ち着きなはれ。
骨喰が言うことがもっともだ。今の所は難しい。だから、紅葉さんも苦労をしている。そうだな。弟達にまで痛い思いをさせたくない」


「…」
鯰尾は黙り込む。


「…わかった。そこまでいち兄が言うのなら
俺はこいつと出来る限りのことをするよ」
鯰尾は骨喰の肩に手を置く。

「気安く触るな!」

鯰尾の手を払いのける。


そして内番が終わる。
紅葉が内番が終わったことを伝えに来た。


「俺はちょっと眠い…今日は疲れた…」
骨喰はスタスタと道場を後にする。


「ちょっと骨喰。待ってよ」

「うるさい!ついてくんな!」

(あ〜イライラする。俺は何でこいつに
こんなにイライラしなきゃならないんだろう)


鯰尾と一期一振はきょとんと顔を見合わせた。








それから翌日。
紅葉から遠征に行くように定められた。

「え?俺と骨喰とそれから乱ちゃんと秋田と
五虎退で行くんですか?」

「そうよ〜私が新たに第二部隊を結成したからね〜」


紅葉はノートに何かを書きながらそう言った。

鯰尾はそれを見て
(あ〜この人、たぶんまたあれを…)
とりあえずそこまでで考えを止めた。
あまり想像したくない。


「だから資源集め頑張ってね♪」
と、紅葉はにっこりとほほ笑む。

(結局はそれか…)






紅葉と後にした後、俺は骨喰の方へと言った。

「なんだ?何か用があるのなら早くしろ」

「あ、えっと…今から俺とお前と乱ちゃんと秋田と五虎退で遠征に今から行く…」

(こいつ何で怒ってるんだ?)

骨喰は興味がなさそうに鯰尾を見ない。

「そうか。さっさと終わらせるぞ」


そして、立ち上がり鯰尾の前を通り過ぎる。

「ちなみに俺、隊長なんだ…へへ」

しかし、骨喰は無視をする。

(感じ悪っ!)




「遠征怖いですぅ〜」と五虎退。
「まあ、みんな一緒に乱れちゃえばすぐに終わるよ。兄さん」と乱ちゃん
「遠征楽しみです〜♪」これは秋田。


鯰尾は前を歩く。その一番後ろに骨喰がいる。

(なんだよ、なんだよ。いつもは後ろにいる癖に…)と骨喰の方を睨む。

だが、骨喰は何か考え事でもしてるようだ。



骨喰はこう思っていた。
(鯰尾は一期一振さんに最近ベタベタひっつき
すぎだ。合うたんびにいち兄いち兄と…。
最近は俺に対してスキンシップが減った

…いや、俺はそんなんで怒ってるんじゃない。
鯰尾の態度にうんざりしてるんだ


だけど、胸が痛い。
鯰尾が俺を忘れてしまったらと思うと…

忘れて何処か遠くへ行ってしまったらと
思うと俺はそれが辛い。


あいつは昔の事なんて忘れているんだ。
あいつは記憶がなくなる前はどんな奴だったん
だろう…?)



ちらりと鯰尾がこちらを見た気がした。
だけど、俺は視線をそらす。


そして…遠征が始まった。
粟田口の弟達とその兄にあたる骨喰と鯰尾は蝉がコーラスを鳴らす中歩き出した。


今日も暑い。

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