リヴァロさんと愉快なユニットたち

□青い夜と街の光と君
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チチチ……と小鳥のさえずりが聞こえる街はずれの公園で1人ベンチに座って本を読む青年の姿が見える。

赤錆色のクセのある髪を左に寄せた髪型は精悍な緑の瞳と相まって幻想的な雰囲気を醸していた。


彼の名はアーメス
そして彼の国に知られている名は
第一正規隊ロイヤルパラディン
光の剣士ブラスターブレード


国中の人々から羨望の眼差しを受ける彼も同じ人間

今日は体を休めるために休暇をとっていた。


「ふぅ、静かな場所はいいな。本を読むのにもってこいだ」

さわさわと揺れる枝を見ながら軽く息をついてアーメスはゆっくり立ち上がる。
ふと、何者化の気配に気づいたのだ。


「……そこにいるのは……アレフだろう?」

「…………ばれた?」


がさがさと買い物袋を鳴らしながら
まるでいたずらがバレた子供のような表情をしてアーメスの前に現れるのはどこにでもいる若者に変装したこの国の国王……騎士王アルフレッドである。


「ばれた?じゃない。仕事はどうした」


「うぅ……それがね?いつも通り仕事してたら……みんなから顔色悪いから休めって……」


いつも仕事をほったらかすことのないアルフレッドがここにいることに疑問を覚えたアーメスであったが、理由を聞いて納得した。

「そうか……、そうだ。どうせなら少し街を歩かないか?久しぶりに」

「!……それってデートって事でいいの?」

ポツリと言ったアーメスの言葉にアルフレッドは嬉しそうに反応する。
付き合い始めてから片手で数えるほどしかデートはしていないのを思い出しアーメスも思わず嬉しさに頬を緩ませる。

「お前がそう思うんならな」

よほど嬉しかったのかアルフレッドは国王らしからぬテンションでぴょんぴょんはねている。
アーメスも本当はハメを外したいが、止めるものもいなければいけないと自分を強く押さえ込んだ。

「やった!デートっ!」

「あんまりはしゃぐなよ」

「転ばないから大丈夫!」

「そう意味じゃねーよ」

ラブラブ……というよりは和気あいあいと楽しそうに歩く2人

仕事上会う機会が多くても、世間話や愚痴をいう時間などなかったせいか、知らず知らずに話に花が咲く。

キャッキャとはしゃぐアルフレッドの国王たる凛々しさはなりを潜め、少年のような明るさでアーメスの隣を歩く姿は凝視しても国王だと気が付かないだろう。

だかそんなことを知らないアルフレッド本人はきっちりと変装をしている。

そんなところもアルフレッドらしいと思いながらアーメスは隣を歩いていた。

「ねぇねぇアーメス!買い物行こうよ!」

「あぁいいぜ。どこに行く?」

「んーと……服!最近着てるワイシャツもサイズが合わなくなって変えないといけないし……他にいろいろと買いたいし」

「サイズ合わなくなったって……なんだ、太ったのか?」

「ち、違うよ!身長伸びたの!ほらっ!ちょっと高くなってるでしょ?
それに鍛えてるから肩幅とか筋肉で広くなるし……と、とにかく太ったわけじゃないから!」

「そうかそうか」

「もー!信じてないでしょー!」

「信じてるって」

「嘘つき!笑いながら言ってるし!絶対信じてない!」

「いやーだってなぁ」

身長があまり変わってないように見えるのはアーメス自身も成長しているからなのだろうが、やはり自分よりも十センチも小さいと可愛く見えるようでアーメスは珍しく頬を緩めながらアルフレッドの頭をなでくりまわしている。

「……子供じゃないんだよ?」

「悪いな、可愛かったんだ」

「かわっ……もう、アーメスばか……」

照れてしまったのかそれとも機嫌を悪くしたのか。
手に持っていた帽子をアーメスの手が頭から離れた瞬間にかぶってしまう。
少し残念そうなアーメスをよそに足早に路地裏に入ってしまうアルフレッドを追いかけてアーメスも路地裏へと入った。

「おい、悪かったって……っ!?」

いくら王都とはいえ路地裏は危ない
慌てて追いかけアルフレッド見つけると、アルフレッドはアーメスを引き寄せていきなりキスをする。

「っ……んんっ……」

人気はなく。しん……と静かだが、いつ人が来てもおかしくない場所だ。
それなのにアルフレッドは何を考えたのかさらにキスを深くした。

「んっ……ふぅ……っ……もっ……やめ……」

一方的なキスに耐えきれなくなったのか無理やり口を離して息を吸うアーメス。
アルフレッドは少し残念そうに自分の唇を舐めた。

「惜しい……もう少しでアーメスの腰がくだけたのに」

「んなことしなくていいっ」

真っ赤になって言い返すアーメスにアルフレッドは少し嬉しそうに笑って手をつないだ。

「……さっきはゴメンネ?ちょっと可愛いって言われてムッとしたんだ……
それに……久しぶりだったし?」

少し照れながら上目遣いで言われてしまい
納得してしまう自分も自分だな……とアーメスは感じるのだった。

「次あんな場所であんな事やったら口離す前にげんこつ落とすからな」

「酷い……気持ちよさそーにしてたじゃん」

「それとこれとは話が別だ。誰が好きであんな場所でするか」

意地悪く笑うアルフレッドに困ったように頭をかくアーメス。

「そう言えば……久しぶりだったからかな?
下手になってたね、ずっと受身だった。
もしかして他の子と遊んでるんじゃないかと思ってたから安し……いだっ!」

「もう帰るぞ俺は」

「ちょっと待ってごめんって、でも殴らなくたっていいじゃん」

げんこつを食らった頭をさすりながらアルフレッドが涙目で言うとふいっとそっぽを向くアーメス
よく見ると少しだけ顔が赤い。

「……うるさいっ」

「あ、照れてるの?」

「も一発殴ろうか?」

「ごめんなさい」

もう殴らないで……と降参という意味も込めて手を頭に持ってくるとアーメスはため息をつきながらも殴ろうとする動作をやめた。
どうやら殴るつもりはなかったらしくホッとしたアルフレッドはアーメスにひっつくように歩き始める。

夕暮れが近づき茜色が覆い被さる黄昏時。
二人の影は郊外の道で長く伸びていた。


「着いた……もう夜だね」

「ここは王都の中心からかなり離れているからな、でも……それだけいいものも見られる」

アーメスはそっと空に向かって指を向ける。
瞬く星々の中にキラリと流れていく光がアルフレッドの瞳に映る。

「あー!流星!」

嬉しそうに次々と流れる流星を見つめるアルフレッドに微笑みながらアーメスもまた感嘆の息を漏らす。

「流石、オラクルの気象観測技術は伊達じゃないな」

「え?オラクルって流星の観測もしてるの?」

アーメスの言葉に驚くアルフレッドにアーメスは少し呆れた声を出す。

「お前なぁ、この国の王なんだからちゃんとこの国にある商業会社が何やってるのか把握しとけよ……。
天気観測はオラクルシンクタンクにとってお手の物、しかも流星観測に関してならあのスターゲートすら超える技術を持ってるんだぞ?
この国の奴らなら大体のやつが知ってる」

「ご……ごめん…、天気観測がハズレなしってくらいしか聞いたことなくて……」

ショボンとうなだれるアルフレッドに言いすぎたと思ったのかアーメスはポンポンと頭をなでる。

「……まぁ、今日知ったからな。
忘れなきゃいい」

「!……そ、そうだね!」

すぐに立ち直った様子のアルフレッドを見てほっと息をつくとアーメスも星を見上げる。

きらめく夜空はまるで天体ショーのようでふたりは言葉をなくして見入っていた。


「……ってもうこんな時間!!」

ふと気がついたアルフレッドが腕時計を見ると既に日付は変わり真夜中の時刻になっていた。

「流石に見すぎてたなもうすっかり夜が更けてる」

苦笑いしながら帰り支度をしているアーメスにアルフレッドは頭を振った。

「まぁ、すごく綺麗だったから別に気にしてないけどね」

「そうだな、いいデートだった」

「あぅ……それ今言う?」

いきなり言われたのもあるのか顔を赤くするアルフレッド、しかし周りは暗く月明かりや星野あかりがあってもその顔はアーメスにはよく見えない。

「今言わなきゃいつ言うんだ?」

きょとんとした声を出しているあたり無意識なのだろうと感じたアルフレッドは自分だけが恥ずかしがっていることに少しだけ落胆した。

「……もー、アーメスのずるっ子め」

「ずるっ子ってなんだよ」

むすーっとしているアルフレッドにアーメスはくつくつと喉を鳴らして笑っている。
そんなアーメスにアルフレッドもつられて笑い、ふたりは笑いあいながら帰路についた。
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