※物語冒頭に、オリジナルキャラが会話しています。

・魔女の罪の罪はラグナロクによりある程度軽くなった

・ラグナロクでの死者は奇跡的に無し

・「婚約者がいる」の話に関してはエルザがジェラールの嘘、「婚約者がいる」を嘘だと見抜いていていたことをジェラールがラグナロク終盤時に見ぬかれていた知る





「だから、笑って…」





「ルゥネ、何か食べたいのある?」

「アーロンが食べたいもの」

「…ルゥネが食べたいものじゃないから却下」

「……じゃあ、クレープ。久々に食べたい」

「クレープな。任せろ」

「ちょ、コラ!!待て、アーロン!!」





なんて、賑やかな声と楽しげな音楽が聞こえるここ…フィオーレの中で一番盛り上がる言う祭。【フィオーレ祭】に、ルーシィから借りた、藍色を基調とし、所々に水を描いたような模様のある浴衣を身に纏い、ジェラールはフィオーレ祭の中で最も目立つ、赤い鳥居の下に居た。





元々、開催されることは知っていたものの、フィオーレ祭に参加する気は無かったジェラール。だが、エルザを筆頭とした妖精の尻尾やジェラールの所属する新生魔女の罪のメンバーが「お祭りに行きたい!!!」と、いつものように騒ぎ出した為だった。



…とは言っても参加するつもりは毛頭無かったジェラールだが、参加することにした要因が2つある



「いいですか、ジェラールさん!!

まず、ラグナロクで死人も出ずに、みんな奇跡的に生き残れたこと。

そしてジェラールさんは今、ラグナロクの戦績とメストさんの計らいでもう"罪人"じゃないんですから!」

「たまには自分に優しくしてもいいって、ウルも言ってたでしょ!!」

「ジェラールは一人なんでもで抱え過ぎなんだゾ。たまには、肩の力を抜くことも大切だゾ。」



と、一つ目はメルディ(と何故か途中から混じっていたソラノとジュビア)に言われたこと。

そして何より、参加する要因になったのは…



「あの…!ジェラール…。ちょとだけ、いいだろうか?」

「ん?どうしたんだ?エルザ」

「そ、その…私と一緒に、フィオーレ祭を、まわってくれない…だろうか?」



と上目遣いで、誘うことが大分恥ずかしかったのだろうか。熟したリンゴに負けないくらい赤くなった頬に、いつもなら勇猛果敢で真っ先に敵に突っ込んでいくような彼女から聞くとは思ってもみなかった可愛いらしい発言…



ここまで言われて「行かない」とは言えなかったし、なによりも、好いている相手からあんな可愛いらしい誘い方をされたら断るなんて出来なかった





なんてことがあり、ジェラールは今、エルザと待ち合わせをした赤い鳥居の前に浴衣で立っているのだが。



(約束の時間まで、あと少しか…)



…正直、ここにきてエルザに会うのが怖くなっていたジェラール。



と言うのも。前述のようにラグナロクのこともあり、"大罪人"では無くなったことが要因の一つだった。

勿論、自身の罪が無くなったとは思ってはいない、のが。

前の状況ならば「罪人だから」という最もらしい理由をつけてエルザから逃げることも出来た。



でも、今はもう、それで逃げることは出来ない。

今、それを口実にエルザから逃げたらーー本当の意味でエルザを傷つけることになる。

ジェラールはそれを理解していた。

つまり、今。逃げる口実が無いのにエルザに逢い、理性が持つのか。

もしかしたら楽園時代のように押さえつけて無理矢理にでも、自分の物にしようとしてしまうのでは。と

堪らなく自分が"怖い"と感じてしまっていた。



(もう、あんなことはしてはいけないし、エルザに二度とあんな酷いことをしたくない。…そう思う気持ちは本当だが…ジークレインはオレ自身だ。思念体だったとは言え、二度とジークレインの人格が出ないとは言い切れない)





など、1人思案していたジェラール。

そこに耳慣れた、心地良い声が辺りに響いた。





「ジェラール。すまん、私から誘ったのに、遅くなってすまなかった。

…だいぶ、待たせてしまったか?」



と駆けよって小首を傾げる、愛しの彼女ーーエルザ。



「いや、大丈夫だ。オレも、今来たところだしな。」



と、言って微笑むと「そうか?」と彼女も微笑み返してくれた。

楽園の塔から変わらない。

見てるだけで他者を惹きつけ、暖かい気持ちにさせる、大好きなあの笑顔を今、"オレにだけ"見せてくれてる



ーーあぁ、もう…。本当、そこでオレに笑いかけるとか反則だろ…





「浴衣というものをあまり着なくてな。そこでルーシィに着つけてもらったのだが…似合うだろうか?」



と、上目遣いで不安そうな瞳で見つめてくるエルザ。



確かにいつも鎧を纏っている彼女とは違い、今日はピンクを基調とした浴衣に赤い椿に紫蝶々をあしらったものだった。

長い髪を団子状にまとめ、そこに簪を刺した、女性特有の儚さを感じさせる格好で…



など考えつつ、エルザに視線を戻すと、相変わらず不安そうな瞳をしていて、少しだけ…意地悪をしたくなってしまった。





「とっても、似合ってる。

…他の男に見せたくないくらい。」



と、エルザの耳元で、少しいつもよりも低く呟けば、途端に赤く染まっていく頬。



ーー全く…本当、今日は何度、愛おしいと思わされるのだろうか



「お、お前はっ!またっ!!そんな、は、恥ずかしいことを…っ」



自分だけが羞恥で頬が赤くなったのが悔しいのか。抵抗し殴りかかろうとするエルザの手を殴られる寸前で受け止めたジェラール



「待てって。…本当に、凄く可愛いんだ」

「…っ、!!」

「…まったく、そんな顔すんなよ。

…そんな可愛い顔されたら屋台なんか回らないで、二人でずーっと、ここに居たくなるだろ」

「なっ!?、なななな何言って…っ!!」



さっきよりも更に赤くなり、今度は前よりもっと恥ずかしかったのか、絶句とも取れるように、魚みたいに口をパクパクさせている



(あまりに可愛いかったからって、

ちょっと、からかいすぎたな)



なんて思いつつ、スッ…とエルザの前に立ち、



「行こう、エルザ」



そう笑いかけ、手を差し伸べる。

ーーわざと、あの時の、楽園の塔の時と同じ台詞を言ってみる。



すると、やっぱり気づいたのだろうか。小さく、でもちゃんとオレにも聞こえるようハッキリと



「ジェラール、それ…ズルい…。

というか!もう…さっきから全部ズルい…」



やっぱり、頬を赤くしたままでエルザが呟いた。



少し勝ち誇った笑みを浮かべれば、ちょっと頬を膨らませた後、やっぱりそれでも、オレの大好きなあの優しい笑顔を向けてくれる。





ーーーごめんな、エルザ。

オレは馬鹿だから、きっとこれからも些細なことでエルザを傷付けることがあるかもしれない。



でも、それでも。

オレにとっては、エルザ。

お前は間違いなく光だから。



草木が、森が、人が、太陽を無くしたら生きていけないように。

オレは、お前を傷付けてしまうと分かっていても、お前を手放せそうにないから。






なら、せめて。

今まで、悲しませた分も、泣かせた分も。

これからはきっと笑わせてみせるから。



だから、笑って………

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