とある日の午後。
仕事を終えたナツとハッピー、ルーシィがギルドへと歩を進めていた。

魔道士ギルド『フェアリーテイル』の扉が勢いよく開いたかと思うと
「「ただいまー!」」
いつも通り元気なナツとハッピーの声と、
「ただいま・・・」
疲れを隠しきれないルーシィの声がギルド内に響いた。
「あらあら、お帰りなさい」
と、にこやかに彼らを出迎えてくれたのはミラ・ジェーンだ。
疲れたルーシィを気遣うようにミラは彼女に声をかけた。
「お帰りなさい、ルーシィ。随分と疲れているように見えるけど・・・大丈夫?」
ミラからの質問にルーシィはあまり覇気のない声で返す。
「ただいまミラさん・・・。もう、今回も壊したり怒られたりで・・・」
そう言うとルーシィは、エルザたちと何やら楽しげに会話するナツの方へチラと視線を送った。
その視線の意味を感じ取ったのかミラは少し苦笑気味に答える。
「あぁ・・・また色々壊しちゃったんですってね。ルーシィたちが帰ってくる前にこっちに連絡が来てたわ。」
「すみません・・・」
ため息混じりにルーシィは謝った。そして額に手を当て、
「今日はいつもの疲れも一気にきちゃったのかな・・・。帰って寝ようかなあ」
そう言うとルーシィはお疲れ様です、と挨拶しギルドを後にした。
「あらあら・・・本当に疲れちゃったのね」
と、小さく呟くミラの傍に今度はナツがやって来た。
「あれ? ルーシィ、帰っちまったのか?」
その隣にハッピーも飛んできてギルド内を見渡すと、
「ホントだ。ルーシィいないね?」
と言った。
そんな二人(一人と一匹)の様子を見て、ミラはメッと言うような顔をして言った。
「二人共、ルーシィのこと忘れてあばれちゃダメよ。疲れて先に帰っちゃったみたいだけど」
「ナツ、今回の暴れっぷりはすごかったもんね」
「んあ? そうか?」
ハッピーの言葉にナツはもう忘れたと言うように返した。
「様子、見に行ってあげたら?」
とミラはナツに提案した。
「んーどうすっかなー」
と、しぶるような返事をしたナツを見てその隣から
「何か精の出る食べ物でも持っていったらどうだ?」
とエルザが声をかけた。
「精の出る食いもんか・・・。よっし、行くぞハッピー!」
「あいさ!」
そう言うと、ナツとハッピーは帰ってきた時と同じように勢いよく扉を開け、ギルドを後にした。
         *

 「「ルーシィ」」
と、それぞれの手に魚を握った二人(一人と一匹)は声を揃え、さも当たり前のように窓からルーシィの部屋へと入った。
だが、いつもはすぐに返ってくるはずのルーシィの怒声が聞こえず、代わりに部屋からは小さな寝息がベッドのある方から聞こえた。
ハッピーがソっとベッドの方へ飛んでいくとそこには静かな寝息をたてて眠るルーシィの姿があった。
ナツもベッドの方へと近づき、
「なんだ寝てんのか」
と、声のトーンを少し抑えつつ話した。
「あい・・・本当に疲れてたんだね」
とハッピーも小さな声で話した。
「せっかく魚持ってきてやったのに」
「あい。おいらのチョイスだから味は保証するよ!」
と、会話をしているとふとナツが「あっ」と何か閃いたような顔をした。
「どうしたの? ナツ」
すると、ナツは足音をたてずソっとルーシィに近づくと、自然な動きでルーシィの瞼に自分の唇をあてた。
「なっなっ何してんのさ!? ナツ! 起きたらルーシィに怒られるよ!? 」
と慌ててハッピーが止めに入る。
「いあ、この前コッソリ読んだルーシィの本にこういうシーンがあってさ。眠ってるお姫様にどっかの国の王子がキスするやつ。面白そうだから真似してみたかったんだよなー」
そういうとナツは意地悪っ子のような笑みを見せた。
それに対しハッピーは、
「それは本の中の話でしょ、まったく・・・」
と呆れるように返した。
その時「んっ」と小さく唸るルーシィの声がベッドの中から聞こえてきた。
「ほらあ。ナツが変なことするからルーシィ起きちゃうよ」
「んだとこらー! 」
「シーーーーーーッ! 」
「お、おう・・・」
再び静かになった部屋でルーシィは寝返りをうちまた、静かな寝息をたてて寝始めた。
その様子を見たナツが口を開き、
「起こしたら悪いし、そろそろ帰るか」
とハッピーに言った。
ハッピーは「あい」と小さく返事をし二人(一人と以下略)は静かに部屋を後にした。

        *

翌朝。
「んっ・・・よく寝た」
小さな伸びをして起きたルーシィは、テーブルの上に見たことのない魚が二匹置いてあることに気がついた。
テーブルに近づくとその魚の一匹には見覚えのある赤いリボンがしてあることに気付いた。
「あいつら・・・」
そのリボンを見たルーシィはフッと小さく笑みをこぼし、魚を台所まで運んだ。
「そう言えば、何かすっごくいい夢を見てた気がするんだけど・・・んー思い出せない。覚えてたら小説の参考にできてたのになあ・・・」

今日も明るい朝日がマグノリアを優しく包み込んだ。

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