DREAM

□鬼ごっこ
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今一番欲しいものはどうしたら手に入るのか。

欲しくてたまらないものは金でもどうにもならない。








「三千院くん!」


そう言って俺に向ける笑顔も、小さいのにたくさんのものを抱えてるその体も。

全部、俺の物にしたいのに。



どうしたらこいつは俺の物になってくれるのか。










届きそうで届かないこの手がもどかしくて、駆け寄る彼女を抱き寄せた。




「え、あ、あの、三千院くん!」



本当に細い体だな。

こいつが逃げないように腕に力を入れる。




「なぁ。」


こいつの耳元でわざと低い声で言ってみる。




名字の心臓がバクバクとうるさいのが分かる。
多分俺もだろう。











「俺の人生をお前にくれてやるから、お前の人生も俺に寄越せ。」




満更でもないようにいっているが、俺の顔はこいつに負けないくらい赤くなっているだろう。




彼女の言葉を待っていると、俺にしか聞こえないような小さい声で話し出した。



「…そ、そんなプロポーズみたいなこといきなりすぎるわ…。」












そう言われるとプロポーズらしい言葉だったな。

改めて指摘されると少し焦ってしまう。









だがこの俺がここまでしてやったんだ。ここで引き下がれるか。



「ふん。早く返事をしないと、ずっとこのままだぞ?」



そう言ってやると名字はますます慌て始める。











「嫌じゃなかったら、とっくに突き飛ばしてるわよ。」



彼女はそう言って俺に腕を回してきた。









両想いって、ことか…?





嬉しいはずなのに、どこか現実味がなくて

彼女の存在をちゃんと確かめたくて腕の力を緩めて目を合わせる。



見たことないくらい顔を赤くしていた。









彼女に触れたくて彼女を確かめたくて

彼女の頬に手を添えて、顔を近づける。









「は、」


「ん?」



何か言いたいのかと思って彼女の様子を伺うと
いきなり意味不明な悲鳴を発して逃げてしまった。






驚いて少し途方に暮れてしまう。


しかし、少し見えた耳が真っ赤だったから拒否されたようではなさそうだ。










このまま逃がしてたまるか。





あいつの運動神経の良さは知っていたが、俺だって毎日鍛えてるんだ。








「待ってろよ。」





あと少しで手に入るんだ。ずっと欲しかったものが。




こんなつまらない鬼ごっこ終わらせてやる。

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