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□本日江戸ノ空ハ快晴花見日和ナリ
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空には青が広がり、日の光は柔らかく風に舞う桜と共に降り注いでいた
ポカポカと言う音が似合いそうな穏やかな日和を見上げる
笠を持ち上げる手は光を浴び、仄かな暖かさを感じていた
五分咲きと言った所だろうか、桜は見事な花を咲かせ、その身を少しだけ散らしていた
花弁は風に乗り、時折顔を掠めたり服に付いたりと気儘に踊る
日を浴びて白色と桃色が輝いていた
その光景に、思わず目を細めた
しかしその目は穏やかな空も桜も見てはいなかった
遠く遠くのそのまた遠く、まるで手の届かない眩い楽園を見つめる様で―――
また、風が桜を攫った
「万斉、」
「なんで御座るか」
「暫く出て来る、後は頼んだ」
「し、晋助!?何処へっ!」
「なぁに、」
今度は笠を下げ顔を隠した
「ちょっくら花を愛でに行くのさ」
微かに見える口元は楽しげに笑っていた