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□烏の傷跡
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暗い暗い宇宙では惑星や星々がしるべとして輝いてる
巨大な宇宙船の巨大なモニターは外の景色を鮮明に写していた
烙陽に向かう途中、虚はそのモニターをジッと見つめていた

『あれは確かモーミルク星…あっちはヘビーミー星…』

膨大な記憶の中から思い当たる星の名前を引っ張り出しては心の中で呟いた

『あれは…知らない星ですね。小さいから名前もないのでしょう』

小さな小さな星だった
数ある中の、ただの星
直ぐに後ろに走り去った、小さな小さな星
そんな星が何故か気になった

「………」

幼い幼い大人だった
松陽の弟子だと、伝説の白夜叉だと聞いて興味が湧いた

一つは朧と2・3度相対したと言うのに、未だに生きていると言う事

それから、彼の話をした時の朧の目だ
何かに焦がれるような色を混ぜた薄暗い目



そして何より、私を殺したと言う事実。



「白夜叉…坂田、銀時。」

ふと彼の名前を呟いた

松陽が愛した童
伝説と呼ばれた鬼
松陽の首をハネた青年
己に刀を向けた、男

傷一つ無い己の体
あの時切られた傷は直ぐに治ってしまったけれど…

ソッと首に左手を持って行った
己の体に唯一残った、傷
首を切られたと言うよりは猫に引っかかれた様な傷だ
でもその傷は永久の命を、虚ろな自分を終わらせてくれるやも知れない最後の希望

微かに感じる膨らみに、虚は確かな喜びを覚えた

「銀時…」

弧を描く目と唇
呟いた声は、まるで恋人に向けるような甘い響きを纏っていた
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