クライま〜ずハイ↑2WS
□《くらいむ-9》麒麟の湯
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午後3時、塔介はホテルの売店にいた。
「ゆきらのヤツ、菓子とジュース買って来いだと
パシリに使いやがって!
ルームサービスでも頼めばいいじゃねぇか、何のためのスイートだよ!」
カゴに菓子類とジュースを詰め込みながら、愚痴をこぼす。
が、ゆきらに洗濯と部屋の掃除まで、やってもらっている塔介でもある。
「部屋の掃除は頼んでねぇ!
ベッドの下のエロ本捨てようとするし、余計なことしやがって。
(自分のスイートは掃除サービス付きだからって、狭いコッチの部屋掃除しに来るなんざイヤミか!)」
菓子ジュースの詰まったカゴを、売店のカウンターテーブルに乗せる。
木の棒に刺した肉の塊を焚き火に当て、クルクル回している、どうぐ屋☆が精算する。
「コラコラ!
屋内で焚き火やってんじゃねぇよ!
(今回はもんはん?)」
塔介は急いでカウンター内に入り、奥からバケツに水汲んで、焚き火にぶっかけた。
まだ火災報知器が反応する前でよかった。
「アホか!
また、警察消防やらのお国のエラい大人たちに、ご厄介なるつもりか!」
さて、どうぐ屋☆に塔介はコソコソ話し掛ける…
「ところでよぉ、この前の[凸平台モーモー牧場の時の]、崖渕が撮りためたエロ写真、オレに焼き増ししてくれねぇか?」
「ゴメンよぉ、盗撮容疑ってことで、ネガ全部、警察に没収されちゃってさぁ!」
「あ、そ、残念…
(すでにお国のエラい大人たちにご厄介なってたか)」
そういえば、どうぐ屋☆の包帯や絆創膏姿は、某ゲームのコスプレでなく、女子たちに半殺しにあったためと分かった。
「にゃーっ」
どうぐ屋☆の脇から、ネコが1匹、顔を出した。
暴れているのをどうぐ屋☆が手で抑えている。
腕の傷の方は、半殺しの傷でなく、ネコの抵抗によるもの…
「(ゲームマスコットのつもりか…?
どっから拾って来たんだ、その野良猫、全然懐いてねぇ…)」
菓子ジュースの入った袋を提げ、塔介はエレベーターを降り、11階フロアに着いた。
相変わらずの静けさと厳かな雰囲気のスイートフロア。
塔介はギョッとした!
ゆきらの部屋から、“あの”ウンダカ人が出て来たのだ。
「チョンマゲ〜。」
ウンダカ語で、ゆきらがウンダカ人を送り出している。
「あら、塔介!
ちゃんと買って来てくれた?」
ゆきらに見つかる。
「紹介しておくわね。
ウンダカ人の『オットー』さんよ。」
「イトコの、トースケさん、デスネ!
オットー、デス!」
「はは…よろしく…」
塔介はオットーとシェイクハンドするが、頭の中はそれどころではない…
何故、ゆきらの部屋から出て来たのかが、気になってしょうがない。
「な、ナゼ、ゆきらの部屋から?」
「ああ、勉強見てもらってたの。
英語と数学。
受験だし、これから見てもらおうって。
家庭教師ね。
オットーは留学生だから、頭も良いのよ。
塔介、アンタも受験生なんだから、遊んでないで、勉強しなさいよ。」
「な、ナルホド。
家庭教師…ね。
(“これから”って毎日ゆきらの部屋で二人きり?)」
少しホッとしたものの、不安は残る塔介であった。
オットーと名乗る、浅黒い肌のウンダカ人は、背を向けエレベーターへと消えて行った。
“忠犬”塔介は、頼まれていた菓子ジュースを、ゆきらへ確かに手渡した。