FLOWER Episode1

□保身より正義
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「…やっぱりか」



下駄箱を開けた私は、そこにぶら下がる赤札に溜息をついた。





遠巻きにして眺める周囲のざわめきが、耳に届く。


「…赤札だ」


「何やらかしたんだよ、あの子…」


立ち尽くしていると、誰かが肩に手を置く。


振り返るとそれは、牧野つくし。


「柏木さん…」



同情するように優しく声をかけてくれた牧野さんだったけれど、

その眼差しはゆるぎない力強さを秘めている。


(きっと、負けるなって言ってくれてる)


その時ふと、牧野さんの向こうに佇む4人組の男子生徒が目に入った。


(…F4だ)


私と牧野さんにゆっくりと近づいてくる彼らこそ、


赤札を取り付けた張本人。


(さすがに驚いたが…覚悟に上だから)


「これからは『つくしちゃん』って呼んでもいい?」


F4の方に視線を向けながら私が訊ねると、

牧野さんは一瞬驚いた様子を見せるも、すぐにニコッと微笑む。


「私も名前で呼んでもいい?」


こうして、つくしちゃんと私は共同戦線を結んだのだった。



そんな私たちにゆっくりと近づいてくるF4のメンバーたち。


「牧野に続いて女の子の赤札はキミで2人目。なんだか楽しいことになりそうだね?」


楽しげに私を見つめる西門総二郎先輩。


「女に赤札とか、美しくなくて俺の主義に反するんだけど…仕方ないか」


美作あきら先輩は気だるげに髪をかき上げている。


「…」


無関心そうな花沢類先輩。


でもそのビー玉のような瞳から目が離せないでいると…。


「お前ら、覚悟は出来てんだろうな?」


F4のリーダー、道明寺司先輩は不敵な笑みを浮かべて私たちを見おろす。



私は4人を睨むように見つめ返す。


(これからとんでもないことになりそうだけど……後悔はない)


でも、この時の私は想像もしていなかった。



F4を敵に回すという恐ろしさ。



そして…。



複雑な恋愛関係を築き上げることになることを…。
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