―幸リョ
ガサゴソ…シュルッ
ここは幸村邸の一角。
幸村家長男である精市の部屋である。
学校に行くため制服を着ているところだ。
「もう6時か、いい加減にしてくれ…」
と重いため息を吐きながらベッドへと足を進める。
ベッドには小さな山が一つ。
規則正しく布団を上下させている。
「もう6時だよ、いい加減起きてくれないかな」
「ん〜〜あと10分……」
「ダメ、朝練遅刻するよ?」
「……ヤダ…」
「じゃあ起きて!」
「……ヤ…ダ…」
「ハァ…仕方ない」
本日二度目のため息を吐きベッドに上がり上から覆いかぶさり、耳元で
「ねぇ、いい加減起きないと襲うよ?」
というとバッ!という効果音がつきそうな勢いで跳び起きた。
「ちょっ、アンタ何朝っぱらから盛ってんスか!!!///」
「冗談だよ、だって起こしても起きてくれない君が悪いんじゃない?リョーマ君」
「だ、だからって……///」
さっきまで幸村のベッドで気持ち良く眠っていた越前リョーマは先程の発言に顔を真っ赤にしている。
「文句は後で聞くから、まず着替えたら?朝練遅刻しちゃうんだけど」
「はぁい」
やっと起きた越前に着替えを促し自分の支度を再開する幸村。
幸村と越前は同じ立海大付属中学校に通うテニス部員だ。
そして、幸村は部長、越前は期待の一年スーパールーキー、立海には居なくてはならない存在だ。
しかし、なぜ一年生の越前が幸村の家にいるのかというと、二人はただの先輩後輩という関係だけでなく恋人同士なのだ。
昨日は午前中で部活が終わったのでそのまま幸村の家へ、ということらしい。
「リョーマ君、終わった?」
「あとネクタイだけ……ど上手くできない…」
「しょうがないな、入学して随分経ったのに…自分で出来るように努力したら?」
「いいじゃん、どうせ精市にやってもらうんだし」
ハァ…と三度目のため息を吐きながらも越前のネクタイを結ぶ。
「はい、できたよ」
「アリガト」
「どういたしまして、さぁ、もう時間がないから朝練行くよ」
「はい、って朝ご飯は?」
「行儀悪いけど仕方ないから歩いて食べたら?ちなみに俺はもう食べ終えたから」
「う…」
「ほら、行くよ!」
「行ってきます…」
「行ってきます!!」
End