ドフラミンゴ×ロー
□柔らかな束縛の中で夢を見させて
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「おれはお前を…、10年後のおれの右腕として鍛え上げてやる!!!」
その言葉が胸に響かなかったといえば嘘になる。
未来なんて諦めていた。
今、何が出来るのか。
今、どうしたいのか。
そんな今の事しか考えられなかった自分に、未来という光を魅せた男。
縋りたいと、救われたいと、傍に居たいと思った。
この男なら何でも叶えてしまうのだろう。
絶対的な自信は力があるから。
巨大な力は畏怖されるが、誰もが憧れるものだ。
だから彼の元に来たのだ。
その力で全てを壊したいのだと、そう思っていた。
「死ぬのは怖くねェよ」
吐き出すように呟かれた少年の言葉に、空を見上げていた男は視線を下に移す。
「なァ、ドフラミンゴ…。いつになったらおれはお前の役に立てるんだ?」
昨日も、その前も、戦闘には参加させてもらえなかった。
例え殺されたとしても近い内に死ぬのだし、反対に少しでもドフラミンゴの力に、役に立ちたいと思っていた。
「フッフッフ。そう焦るな、ロー。お前はまだ弱い。お前はおれの将来の右腕。犬死にさせる気はねェよ」
「弱くねェ!」
「フッ、弱ェだろ?」
長いドフラミンゴの指がローの頭を弾く。
その衝動でローは床に尻餅をついた。
「おれだって…、ドフラミンゴの役に立てるのに…」
いつの間にか、ローの願いは破壊行動よりも、ドフラミンゴの力になりたいと、そう変わっていた。
本人は気づくはずもないが、ドフラミンゴはとっくに気づいている。
ローがその小さな手を必死に伸ばして、自分に追いつこうとしている事に。
似たような闇を抱える自分たち2人。
だから離したくないし、無駄に命を落としてもらっては困るのだと、ローを見るドフラミンゴの目が、ほんの少し温かなものに変わる。
もっとも、その目はサングラスの奥に隠されているので、見る事は叶わなかったが。
たまに感じるこの空気が心地好く思えるローはドフラミンゴに近づき、窓に手を伸ばす。
「なっ、なにするっ!」
ドフラミンゴはローを片腕で抱き上げ、もう一度空を見上げた。
反対の腕を伸ばし、糸を放つドフラミンゴ。
2人の身体は空に舞う。
「うわ…」
吹きつける風が髪を靡かせ、柔らかなコートが頬を擽る。
落ちないようにローはしっかりとドフラミンゴのシャツを掴み、真下に広がる海を見つめた。
「ロー、場所を変えれば色んな世界が見える」
次から次へと糸を繰り出し、ドフラミンゴは空を進む。
「世界は広い。お前の病気も必ず治るだろう」
「ドフラミンゴ…?」
笑みながら静かに伝えられる言葉は、力強いものだ。
だから、縋ってしまいたくなる。
「おれが死なせねェよ、ロー」
時折見せる不安げなまなざし。
そんなものは杞憂だとドフラミンゴは笑い飛ばす。
頬を擽るピンクのフェザーコートを掴まえ、ローはそこに顔を埋めた。
柔らかな感触が心地好い。
「おれ、お前の傍に居たい」
もう大切なものは失いたくないと、ローはドフラミンゴに腕を伸ばして抱きつく。
「離れんじゃねェぞ」
自分にとっても大切な存在なのだと、ドフラミンゴはローを抱きしめた。
END