コラソン&ドフラミンゴ×ロー

□どこまでも愛そうじゃないか
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 それが度々消えるのは知っていた。

 もちろん、何処に消えたのかも。

 夜中に消えたそれは、朝になると元に戻ってくるのだから、別に放っておいてもよかったのだが、一体何に使われているのか気になってしまい、兄弟は揃って首を傾げた。

 被害者はドフラミンゴとコラソンの2人。

 犯人はローである。

 まさか互いが同じ被害に遭っていると思わなかった2人だが、2人の目の前でそれが同時に消えたことから、使用用途が気になってしまったのだ。



「呪い…とか?」



「バカか、お前…」



 コラソンの呟きにドフラミンゴは呆れたように言葉を返す。



「いや、だって最近やたらと転けるし」



「お前のドジは元からだ、コラソン」



 そう言い合っている間にも、2人の目の前からそれが消えた。

 それに変わってソファの上に落ちたのは、子供向けの図鑑が2冊。

 白熊の生態とその暮らしぶりが載っている図鑑を手に取り、ドフラミンゴは微かに笑う。

 コラソンももう1冊を手に取りながら、この図鑑の持ち主を思って口許に笑みを浮かべた。

 図鑑も何ヶ月か前にローにプレゼントしたものだ。

 ローは我が儘を言わない。

 懐いてはいるが、自分がして欲しいということを、決して口に出さない子供だ。

 甘えるのが下手なロー。

 だからこそ、コラソンは元より、ドフラミンゴもローを甘やかしたくて仕方がなかったし、常々甘えられたいと思っていた。

 ここ最近は忙しく、まだ幼いローの世話は屋敷の者たちに任せきりでいた。

 寂しがっている素振りはなかったみたいだが、どうやらそうではなかったらしい。

 図鑑を片手に、2人はローの部屋へと向かう。

 夜は更けて月明かりに照らされた灰色の雲が薄く光っている。

 ドフラミンゴとコラソンの長い影が廊下に映り、扉の前でピタリと止まった。



「もう寝たかな?」



「いや…、どうだかな」



 能力で入れ替えられた図鑑が現れてから十分ほど。

 子供にとってはもうとっくに寝ている時間だが、自分たち大人に囲まれて生活をしているローにはあまり関係がない。

 それでも音を立てずに部屋に入り込んだ2人は、大きすぎるベッドの上で丸くなっているローの姿を見て目を見開いた。

 白いシーツの上に敷かれた黒とピンクのフェザーコート。

 その上でローは丸くなり、ふたつの袖をぎゅっと抱きしめて目を閉じていた。



「…っ!!」



 可憐しい姿を見たコラソンはローを抱きしめようとするが、ドフラミンゴに腕を掴まれて止められてしまう。



「眠っているみたいだから、寝かせてやれ」



 小声で伝えてくるドフラミンゴに、コラソンは渋々頷き、ベッドの端に腰を降ろした。

 反動でベッドがギシッと軋んで音を立てたが、ローが目を覚ます気配はない。

 ドフラミンゴも反対側のベッドに腰を降ろし、眠るローの髪を優しい手つきで撫でている。



「おれ、今日はここで寝るわ」



「奇遇だな、コラソン。おれも今、そう言おうと思ったところだ」



 2人は静かに笑い合い、ローの隣に身体を寝転がさせる。

 眠っているローは、匂いの他に増えた温かな抱擁に、あどけない笑みを浮かべた。

 翌朝、2人の大男に抱きしめられて目を覚ましたローは、まだ夢の中にいるのかと頭を悩ませる。



「おはよう、ロー」



「よく眠れたか?」



 耳許で囁かれるコラソンとドフラミンゴの声と、頬に触れる唇の感触が夢ではないと教えてくれたが。



「な…っ…、な…で…? コラさん? ドフィ? え、あ…?」



 頭の中に沢山のクエスチョンマークを浮かべたローは、ただただ慌てていた。



「クスッ。ロー、コートじゃなく、今度からはおれを入れ替えろよ?」



「わー…っ、わーわーっ!!!」



「フッフッフ、寂しかったんだろう? コートは甘やかしてくれないからな。もっとおれたちに甘えろよ、ロー」



「ちっ、ちが…っ! うわーっ!!!」



 バレていないと思った行動。

 少しでも2人に触れていたいのだと。

 寝つけない夜は、2人のコートをこっそりと拝借して、ローはその匂いだけで安心して眠れていたのだ。

 それがバレてしまった今、物凄い恥ずかしさが込み上げてきてしまい、ローはコラソンとドフラミンゴの顔を見ることが出来なかった。



「おれも寂しいし、これからはずっと一緒に寝ようか」



 恥ずかしさからコートを目の上まで持ち上げて顔を隠すローに、コラソンが優しく言葉を紡ぐ。



「3人一緒だと、おれも寂しくないしな」



 ドフラミンゴも穏やかな口調でローに伝え、顔を覆うコートをそっと取り去った。

 耳まで真っ赤に染まった顔をしながら2人の笑顔を見たローは、言葉に出来ない感情を胸に、ただ何度も頷いたのだった。










END

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