ドフラミンゴ×ロー

□闇に魅入られた月
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「なァ、若様。援助交際しようぜ」



「寝言は寝てから言え」



 突拍子もないことを言い出すのはいつものことだが、今日のローはブッ飛んでいた。

 ドフラミンゴの腕を掴まえ、ローは身長差のある彼を見上げる。

 普段は椅子にふんぞり返って笑っているドフラミンゴだが、今の彼に笑顔はない。

 与えた仕事は必ずこなすし、確かにローはドフラミンゴのお気に入りだ。

 かといって、身体の関係を持ちたいかといえば、そうではない。

 あくまでも上司と部下。

 大切な仲間であり、家族である。

 少なくともドフラミンゴはそう思っていた。

 無視を決め込もうと、掴まれた腕をほどいてドフラミンゴが椅子に座れば、ローも彼を跨ぐように膝に座る。



「…おい」



 顔を引き攣らせたドフラミンゴが声を上げる。

 何て姿だ。

 こんな男に育てた覚えはない。

 太股に手を置いてもまだ身長差があるローは、サングラスで隠された目を見上げる。



「金が要る」



「は?」



「急な入り用だ」



 だから援助交際をしようと、この男はこう言ったのか。

 頭の回転は早い癖に頭が悪い。

 もっとも、素直でない彼は、借りるということを嫌ってこのような暴挙に出たのだろうが。



「いくら必要なんだ?」



「………」



 ドフラミンゴの問いにローは答えない。

 聞き方が不味かったのだろう。

 だからドフラミンゴは言い方を変えてやる。



「貸す訳じゃねェ。必要な額に見合った仕事をさせてやる」



「断る。いいから早くおれを抱け、ドフラミンゴ」



 己の立場というものを解っちゃいない。

 傲慢なローの態度はドフラミンゴのため息の元となる。

 ビジネスに活かされるべき交渉術も教えたが、ローは最終的には力業に出る男だ。

 ドフラミンゴ自身もそうであるが、ローはドフラミンゴよりも遥かに気が短く、そして諦めが早い。

 諦めが早いのは悪い癖なので矯正させようとしたドフラミンゴだが、性格はそう簡単に矯正されるものではない。

 だったら彼が厭きて諦めるまで待つという手もあるが、ローの深層が知りたくてドフラミンゴは生意気な態度で膝に座る部下を見下ろした。



「ハァ…。いくら出せばいい?」



「10億」



「アァ?」



「10億」



 開いた口が塞がらないという言葉があるのは知っていたが、生まれて初めて経験した。

 ドフラミンゴはニヤリと笑ったローをじっと見つめる。

 何か悪いものでも食べたか、熱でもあるのか。

 様子を窺うものの、見た目は普段とは変わらない。

 悪ふざけにもほどがあると思いながら、ドフラミンゴは更に大きなため息を吐き出した。



「お前…。それだけの価値がお前にあるとでも?」



 その金でこの島の高級娼婦を全員買ったとしても、まだ釣りがくる。

 美貌や知識だけでなく、話術も巧みな彼女たちは、ジョークのひとつも言えないローよりかは面白い会話が出来るし、セックスのテクニックも持ち合わせている。

 ドフラミンゴの眼光は鋭くなるが、ローの強い眼差しは変わらない。



「さァな? 少なくとも、お前に対してのおれはそれだけの価値があると思っている」



 おれはお前に売り込んでいるんだ。

 ローに言われ、的を得た言葉にドフラミンゴは声を上げて笑った。



「フッ、いいだろう。言い値で買ってやる。その代わり、おれが満足するまで付き合って貰うことが条件だ」



「ククッ。おれの勝ちだ」



 妖艶な微笑を浮かべながらドフラミンゴの首に腕を絡めたローは、大きく弧を描いた唇に己の唇を重ねたのだった。










 柔らかなベッドが軋む音と布擦れの音、そして掠れて引き攣った声が部屋に響く。



「フッフ。もう降参か、ロー」



 閉ざされた蕾をギチギチと開きながらドフラミンゴが笑う。

 汗だくになったローは歯を食い縛りつつ、熱く猛る昂りに腰を落としていった。



「うる、せっ…。クソ…いって…」



 馴らしたはずの場所でもドフラミンゴの大きさにはなかなか順応せず、ローは挫けそうになりながらもゆっくりとソレを飲み込んでいく。

 後少しで全てが入ると思った瞬間、ローの腰を掴んだドフラミンゴが自身を抜きはじめた。



「テメっ! せっかく…んああっ!!」



「焦らすお前が悪い」



 批難の声を口にしたローだが、半ばまで抜かれたドフラミンゴに一気に根元まで腰を打ちつけられ、泣き声のような声を上げてしまう。

 一度全てが入ってしまえば、後は動けばいいだけだった。



「ぅ…ぁ…」



 それなのに、初めて男を受け入れた衝撃から、思うようにローは身体が動かせないでいる。

 ガクガクと震える腰が言うことを聞かない。

 まるで自分の身体ではないような感覚と、胎内の異物をその大きさや形まで感じ取りながら、ローは落ち着くように深く息を吐き出す。



「ほら、いつまでも休んでないで動け」



 楽しませろと余裕の表情で笑うドフラミンゴに軽く殺意を覚え、ローは乱暴に腰を上げて勢いよく落とした。



「クッ…はぁっ…」



 ドフラミンゴになら抱かれてみたいと興味本意で思ったのは間違いだったと、腹の中から伝わる痛みと不快感にローは顔を歪めながら苦しそうな呼吸を繰り返す。

 興味は興味で実行に移るべきではなかった。

 金が欲しい訳ではなかったが、それを引き合いに出したのは、ドフラミンゴの中の己の価値を数字で知りたかったからだ。

 こんなことなら、もっとふっかけてやればよかったと、ローは悔しげに目を閉じた。



「フフ、後悔している顔だな。止めてやろうか?」



 不意に優しく頬を撫でられて、その柔らかな口調に思わずドフラミンゴを見上げるロー。

 膝に座るローを見つめる目も、サングラス越しだが優しいと感じられる。

 ドフラミンゴを見たローは訳の解らない何かが胸に込み上げてきて、思わず泣きそうになってしまう。

 情けないであろう顔を見られたくなくて、視線を逸らしたローが動きを再開させた。



「いいから、っは、やく…いけよっ…」



 下肢から伝わる違和感が半端ない。

 ぐちぐちと濡れた音はするのに、萎えたままのローは濡れる素振りすら見せなかった。



「ってもな…、そんなぎこちない動きじゃ、いくにいけねェな…」



 仕方がないから奉仕してやると告げたドフラミンゴに、ローはベッドの上に組み敷かれてしまう。



「なっ、ぁあっ? やめ…っ…」



「フッフッフ。先に気持ちよくしてやる。いい声で啼けよ、ロー…」



 言うや否や自身に伸ばされたドフラミンゴの指に絶妙な動きで嬲られてしまい、ローの呼吸が徐々に上がりはじめた。



「後ろだけで感じるようになるのは、はじめは難しいらしいが…。まあ、教え込めばお前ならすぐにマスター出来るだろうよ」



 だから時間をかけて開発してやると告げられた言葉に、この時になってローは逃げ出すよう暴れた。

 けれど急所をドフラミンゴにきつく握られて、ローは身体を竦めておとなしくなる。



「お前から言い出したことだ。途中で投げ出すなよ」



「ぁ、ぁああっ」



 言葉はきついが、手の動きは優しい。

 上下に動かされる手と連動して自身を抽送されて、ローはドフラミンゴに胎内を貫かれる度に声を上げるようになる。

 嬲られている自身が気持ちいいのか、胎内をドフラミンゴの自身で貫かれるのが気持ちいいのか、それともその両方が気持ちいいのか。

 もうローは解らなくなっていた。



「ここも、こうされると気持ちいいだろう?」



 やわやわと袋の方まで揉み込まれ、ゾクゾクと腰が震えてくる。

 濡れた音が更に響き出して、ローの甘い声と共にドフラミンゴの耳を楽しませた。



「あっ、は、ああ…、も…っ…」



「あァ。いけよ、ロー」



 促されるままドフラミンゴの手の中に熱を吐き出したローは、胎内で熱いものが迸ったのを感じ取る。



「フッ。お前の負けだ、ロー。おれが満足するまで毎日抱いてやる」



 心地好い余韻ととてつもない疲労感に目を閉じたローは、意識を落とす前に恐ろしい言葉を聞いたような気がした。















END
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