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□満月の夜に子守唄を
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「また始まったよ、カラ松お得意の噂話。」
小さい頃から、満月の夜に酒をかわすと信頼が深まる、と父から教えられていたカラ松はそれを信じ、人を招いて酒をかわす時は必ず満月の夜だと決めていた。
今日もまた、友人であるチビ太を館に招き、満月を眺めながら世間話をしていた。
「噂話という訳ではない、これは俺自信の考えだ。」
「頭カラッポなお前自信の考えにしちゃあ、かしこまった話だなおい。いつもはバカみてぇにイタいことばっか言うくせに。」
「フッ…そういいながらも聞いてくれているチビ太には本当に感謝している…いつもありがとな。」
「んな恥ずかしいこというんじゃねぇよバーローちくしょー!へへへ…おだててもおでんはタダにならねぞ?」
「なんだ、タダにしてくれないのか。」
「いや本当にその目的で言ったのかよ!嘘でも誉めろよ!」
「嘘は泥棒の始まりだぞ、チビ太。」
「おでんタダ食いするテメェに言われたかねぇよ」
チビ太はカラ松に呆れながらワインの入ったグラスを傾ける。
夜も更け、民家の灯が少なくなっていた。
月明かりはいっそう町を照らしていた。
「ニャー」
「ん…?おー、猫だ…なんだよカラ松、お前猫飼ってたのか?」
「いや、別に飼ってないぞ。ノラ猫だ。」
「なんだノラ猫か…ってなんで室内にノラ猫がいるんだよ!戸締りちゃんとしてんのか!?」
「しているとも。」
「お前この状況わかってんのか?猫が侵入できちゃう館とかヤバいと思わねぇのか?」
「ヤバいな。」
「…あー…もういいや…お前と会話が成立すると思った俺がバカだったわ。あーっと…猫で思い出した…イヤミの奴、猫と落ちたおでんの取り合いしながらどっか消えちまったんだった…すまねぇ!話途中だったが探してくるわ!アイツ捕まえねぇと通報されることあんだよ。また今度な!」
「あぁ、また満月の時にでも呼ぶよ。」
「お前は本当にロマンチストだな。じゃーな!」
そう言って重たい館の扉を開けて出ていったチビ太を見送り、静まり帰った夜の館で寝る準備をしはじめた。
「ニャーォ」
「おっと、まだいたのか。
……いつも君が来るときは猫がついてくるな。もしかして猫、好きなのか?」