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□天上天下唯我独尊
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【一松side】

おそ松兄さんだけが知ってる。それがどれだけ不安なことか、なんて分かってる。きっと弱味を握られた今、あの人には逆らえないんだろうな。

お金をせがまれるだろうか。物を奪われるだろうか。隠し事は出来ないんだろうな。嘘も見破られそうだ。初めはそんなことばかり思っていた。

でも実際は違った。あの人はいつも通りだった。

逆に優しいなと思う事が増えた気がする。長男だからなのかもしれないけど、秘密を話したあの夜から、相談とか悩みとか、嫌な顔ひとつせずに全部受け止めてくれる。話すと楽になるってこういうことなんだって、実感できるほどだった。

たまにいじってくるけど、それだけで終わる。あの人からは何も聞いてこない。こっちが話すのを待ってる。いつものあの人のイメージらしからぬ姿が、そこにはあった。

そのことに僕は、とても安堵していた…。



今日はおそ松兄さんと僕以外、皆外出中だった。



「あー、ダメだったぁー。ハズれたー!」

おそ松兄さんは床に新聞を広げ、馬券を片手に持ってイーッとなっていた。またか。

「また競馬…?」

「今回は行けると思ったんだけどなぁ…。」

ガシガシを頭か掻きながら寝転んで週刊雑誌を手に取った。これぞニートらしい平日の過ごし方だっ!ってこの前意気込んでたっけ。くっだらね。


「………なぁ一松。」

「…ん、何?」

少し眠くてうとうとしていた。目を閉じて昼寝しようかと思っていた矢先、おそ松兄さんが声を掛けてきた。

目を開くとおそ松兄さんが結構目の前にいて少し驚いた。

「いや、あのさ…まだ思ってんのかなって思ってさ。その、アイツの事。」

「………は?」

突然そんなことを聞かれて、少し焦った。まだ思ってるって、アイツのことって、まさか。

「……カラ松の事?」

「…おう。」

やっぱり、でもなんで。今まで何も聞いてこなかったじゃないか。今更何だよ。

「いやすまん、話してくれなくてもいいんだけとさ…何か気になって。」

謝るなら聞いてこないでよ。こっちにも心の準備とかあるんだから。

「………まだ諦めてないけど?」

「え?諦めてない?」

おそ松兄さんが顔をしかめながら言ってきた。

……本当何なんだよ。

「諦めてないって何を?まだ告白もしてないのに?フラれてもいないのに?」

「っ……な、何なの?」

「一松は自身あんの?アイツに同じ意味の好きが自分にも向けられてるって事。」

「は、」

「最初の頃こそ届くわけないとか言って諦めてたじゃん。なのにさ、俺に話すたびにだんだん緩くなってない?」

「な、にが」

「何がって、決まってんじゃん。気持ちを押さえ込むとか、そういう、我慢する力っつーの?それが弱まってるって言ってんの。」

「そ…んなことない…」

「あるって。絶対あるね。一松は何がしたいわけよ。カラ松とお付き合い?今日カラ松が出掛けた目的知ってんの?逆ナン待ちだよ?意味分かるか?アイツは一松なんか興味ない、ノーマルなんだって。そういう事だよ。」

今目の前にいるおそ松兄さんの言っている事が、素直に頭に入らなかった。こんなに責めてくることなんて一度もなかったのに。あれだけ安心してたのに。何故。今までのは嘘だったのかな。

「…な、一松。お前は俺の事どう思ってんの?」

「…え?」

頭が混乱していると言うのに、また意味のわからないことを聞いてきた。

「それは…わからない…。」

「……俺はさ、一松のこと、好きだよ。」

「っ…!?」

何を言っているんだろうか。何を聞かされているんだろう。おそ松兄さんがわからない。好き?誰が?おそ松兄さんは、今、何て?







「なぁ一松、俺にしとけよ。」



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