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□常連さんはほっとけない
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「いらっしゃいませー。って、あ、君かぁ。」

店員さんが反応するほどここの常連らしい人物が入ってきた。ちなみに私も何度かその姿を目撃している。服装はいつも同じ。紫のパーカーを着て、下はジャージというだらしない格好で奴はやってくる。

なぜ「奴」と呼ぶのですかって?

だって…

「ニャー!」「ニャァア!!」
「「「ニャァアアアアア!!」」」


この店のほとんどの猫を寄せ付けてしまうからである。


「今日はほどほどにして下さ…って、もう遅かったか…。」

店員さんも呆れていた。

あぁ、私の膝に乗っていた猫ちゃんまでも、私から離れて行く…。

「……どうどう。」

何そのなだめ方!?馬じゃないんだから!この前もこれが原因で癒しが失われたのを覚えているわ。まぁ店員さんからお詫びにと割引券をくれたんだけど。今日という今日は黙ってはいられないわよ。

「ち、ちょっとあなた!」

「……?」

「この前もこの状況だったわよね?遠慮とかないの?」

「お、お客様…!」

「……あぁ、どうぞ。」

猫を一匹持ち上げて私に渡そうとしてくる。…いや、そうだけど、そうじゃなくて…。

「マタタビとかつけてるんじゃないわよね…?」

「……マタタビは猫にとって人間でいう薬物と同じだから、絶対にあげちゃ駄目だよ…。」

え、何で私駄目だしされたの?
というか何この人…すごい無愛想…猫好きはいい人ばかりだとはよく聞くけど、この人のオーラ、闇しかないわ…。

「お客様、申し訳ありませんが今日は…。」

「……あぁ、うん。分かった…。」

そう言い残すと奴はスタスタと店を出ていった…

は?何であの人出てったの?
こっちの話はまだ終わってないんですけど…


「ちょっと、ま、待ちなさいよ!」

気づいたら私は店を飛び出しあの男を呼び止めていた。

「だから何?」

「あんたこの店に来てはいっつもあれよね!?何者なのよ!!」

「何者っていわれても…。」




「あの、お店の前で大声を出さないで下さい。」


「「あ。」」






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