book
□プロローグ
1ページ/2ページ
━━まさか親より先に死んでしまうことになろうとは思わなかったなぁ……。
そんなことを医者からの余命宣告の際に思っていたなどと知れれば、両親や弟、友人たちはどんな顔をするのか?
まあ、余命宣告受けたのに平然と、しかも誰にもそれを伝えずに医者からの入院命令が下されるまで平然と生活していたせいで、つい数日前まで両親をはじめとする方たちからのお小言の嵐を受けていたのだから、再び嵐がおきる可能は十分にある。
とりあえず、感染する病気でもなければ吐いたりなどもなく、ただただ砂時計の砂が落ちるように少しずつ寿命が削れていくだけなのだから、実感も湧かないしなぁ……などと先送りにしていた自分が悪いのだが。
『原因不明、治療の余地無し』そんな病気なのだ他人に迷惑かけないだけ良いだろうと思う自分はのんきなのだろ。
しかし、高等部を卒業して由乃や志摩子と大学部へ進学、卒業後はそれぞれの道を歩きつつ、たまに連絡をとっては会っていた程度。
姉の祥子や妹の瞳子とも連絡は取るものの、やはり生きる『場』の違いからか会う頻度は由乃や志摩子に比べれば少なく、山百合会の面々に関しても同様である。
もっとも私のような平々凡々な保育士が、それぞれの分野で活躍する人達と関わりを持っていることにこそ驚きなのだ。
━━もっとも、そんな私の心情を理解しているらしい“あの子”は考え過ぎだと、少し距離をとって接する私に苦笑いしていたが。