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□プロローグ
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 だからこそ、あとわずかで死ぬと知られたとしても問題ないだろうなぁ考えていたのだが、時間の都合をつけて見舞いに訪れてくれる友人や仲間たちには申し訳ないのだけれども。

 そんな風にこれまでのことを思い出しながら、医者に看取られつつ、ひとり静かに生を終えられることに安堵していた。

 ━━だって、入院して余命を知った後の姉と妹の暴走を思い出せば、なんと安心できることか。

 あの日、偶然居合わせたというか知らせを受けてやって来ていた山百合会の仲間たちがいなければ、今頃海外の病院やらでの入院生活となって両親はもとより友人知人と死の直前まで会えなくなっていたであろうことは容易に想像出来るのだから。

「福沢さん! もう少し頑張って下さい! ご家族がもうすぐ到着されますよ!」

 そんな風に声をかけてくれるお医者さまには申し訳ないけれど、ゆったりとした抗いがたい眠気にもう目を開けていることは難しいのだ。

 目を瞑れば何故か学生時代の想い出ばかりが頭に浮かぶ……数日前まで彼女たちからお小言をもらっていたせいかな?

 ━━あの頃は毎日が楽しかったなぁ……こんな時までのんき、だって、おこら、れるか、な……
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