六つ子と合コンでキスをする話。

□紫のパーカーの人
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「えっ」
私はビックリしながらも、自分の都合の良い意味で取ると、ちょっと嬉しくなる。

「・・・」
「・・・」

ふたりでちょっと無言になる。

「わ、私も猫好きなんだけど、アレルギーでなかなか触れなくて。かわいいよね」

私は会話を繫ぐ。

「アレルギー治したい?」一松さんは聞いてくる。

「はい、治るならですけど、でも体質だからなかなか・・」

「治し方知ってるよ」

「えっ、そうなんですか?一松さんって何か・・」
と聞こうとしたところで、

いきなり肩を掴まれて、口を塞がれる。

気がつくと唇と唇が触れていてキスをしている事に気がつく。

ちょっと、好感が持てたとはいえ、
いきなり合コンで知り合った男性とキスするほど私はノリは良くない。

チカラを振り絞って、一松さんを突き飛ばす。

「な、何するんですか!」

「何って、アレルギー治療」

「だって、キ・・キスしたじゃないですか!」

私が怒ると、一松さんは意地悪そうに笑って、
もう一度私の肩を掴む。

「減感作療法」一松さんはボソっという。

「げんかんさりょうほうってなんですか?」
私は聞く。

「アレルギー物質を体内に取り入れることによって、免疫をつくれば、アレルギーは治るよ。
俺は猫みたいなものだからね」

「嘘ばっかり、やめてください」
私が言ってるそばから、もう一度抱きしめられてキスをされる。

抵抗しようと、一松さんの腕を掴むと
冷たくてビックリする。

そうだ、この寒いのに、私を探して、しかも
アレルギーだからと気を使って猫の毛のついたパーカーまで脱いで来てくれことを思うと、

強引で自分勝手で、でも優しいこの男の事がちょっと気になる。

とりあえず、一松さんの冷たい体を少しでも温めようと背中におずおずと手を伸ばす。

一松さんが、私を抱きしめたまま耳元で、

「ねえ。このまま抜け出して、一晩中アレルギー治療してあげるよ」ささやく。


私はもちろん、一松さんの腕から抜け出して
笑って
「お断りします」と言うと、
一松さんはあからさまに拗ねた様な顔をする。

私は、もう一度、
「お断りです、今は。ね」と言って

「とりあえず、戻らないと、マジで風邪引きますから。」
私はそう言って、一松さんの手を取って居酒屋に戻る。


来週は、病院に行って、きちんとアレルギーを治せるように相談してみようとちょっと心に決めてみた。

猫はダメでも、猫好きな男のひとと仲良くなれるくらいは良くなりたいとか思ってみたり。










終わり。
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