Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

□卒業(前編)
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最後だからか、クラスコンパは異様な盛り上がりを見せた。

カラオケのパーティールームで、誰が持ち込んだのか未成年なのにお酒がたっぷりとあり、
おそらくあの六つ子中の二人組だと思うけど、
チョロ松君も常識人といいながらもおそ松くんと組むとどうも悪童になる。

私の高校生活は、一年と二年の半分は良い子の優等生を演じることで精一杯で楽しむ余裕なんてなかった。

高校2年の夏休み明けから、一松と知り合い
話したり喧嘩したりして、いろんな出来事があって、
私は私らしい道を歩むことが出来た。

優等生の自分も自分を守る仮面も人当たりのいい自分と
それを囲む友人たち、

それをすべて失ったけど、

自分で言うのは恥ずかしいけどその代わりに
私は、分かり合い好き合うことができた相手と付き合うことが出来た。

一松と好き合って一緒にいることが出来た。

それだけでも十分なのに、彼の5人の兄弟たちも私の良い友人というか悪友と言うか
一緒に受け入れてくれて、一気に家族が出来たような幸福をそれからずっと過ごしている。


コンパの喧騒の中で、そんなことを思い返していた。

いい高校生活送れて良かったなと思う。

「莉乃ちゃん飲んでる〜?」

「うわっ、おそ松酒臭い!飲みすぎじゃない、チョロ松君に怒られるよ。」

「大丈夫大丈夫、チョロ松もあっちで飲んで騒いでるから」

たしかに喧騒の方を見ると、チョロ松君も珍しく飲んで騒いでいる。

「おおっ、莉乃も結構飲んでるジャン。
じゃあこの勢いで一松との初体験話聞かせてよ〜」

「いいよ〜、一松がね〜って!答えるわけ無いでしょ!バカ松!」
小突く振りをして二人で笑う。

「ちえっ、一松もそっちの話は全然してくれないし、お兄ちゃん寂しいよ〜」

「はいはい、おそ松に彼女できた欄に逆に色々聞いてあげるから」
私は笑って言う。

「まあでも、莉乃が一松の面倒見てくれるからお兄ちゃんは安心だよ」

おそ松が酔ってる中でも落ち着いた声で言うのでドキリとしてしまう。

「面倒って何、シモネタはもうやめてよ」

「いやいや、シモネタじゃなくてさ、

一松がさ、いつの間にか自分も他人も拒絶はじめて、家族や兄弟で一緒にいても、どうする事も出来なかったんだよね。
でもちゃんと莉乃ちゃんの事好きになって、自分で気持ち伝えて、
二人が仲良くしてるの嬉しいんだわ。
俺もさ、もちろんカラ松もチョロ松も。
十四松もトド松も。
口には出せねーけど、スゲエ嬉しくてスゲエ感謝してる。

莉乃はこれから大学生になるけどさ、

俺たちはとりあえず就職も進学も決まってない。
でも俺たちも一松も、時間かかっても将来の事はちゃんと考えるからさ、
莉乃ちゃんは、ずっと一松の傍にいてやってよ」

おそ松くんは、きっとずっとそう思っていたんだろう素直に気持ちを伝えてくれる。

「うん。でも一緒にいるのは全然一松の為とかじゃないんだよ。
ただ、私が一松の事を好きなだけなんだよ。
ずっと傍にいて欲しいのは私の方だから。
でも、そう言ってもらえて嬉しい。」

えへへと笑ってそういうと
おそ松くんはいつものように鼻の舌をこすって笑って、ちゃんとお兄ちゃんの顔で安心した顔をしていた。

そろそろ解散と言うので、
わざわざ迎えに来てもらって送ってもらうのは悪いかなと思いながらも、
一応、一松にお店の場所を教えたらすぐ行くといってくれたので甘えることにした。
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