短篇

□一松ガール
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待ち合わせの公園までは、
まだまだ余裕があるというのに、ついつい走ってしまう。

公園に着くと、待ち人である、彼がすでにいたと思い近づくと、何か違う。

ピッタリしたストレートジーンズ、
でかいドクロのバックルのベルト、黒い革ジャンに、もう日も暮れる時間だというのに、サングラスをバッチリ掛けている。

正直、あまりお近づきになりたくない服装である。

それに、顔は、やはり、私の恋人の一松とよく似ていた。
きっと彼が苦手とするあのお兄さんなんだろうなと思い、
横を静かに通ろうとしたときに、私に何かを気付かれ声を掛けられる。

「アハーン、そこのカラ松ガール待ちたまえ」

「いえ、遠慮します、私は別にそのカラ松何とかではないので・・。」と逃げようとしたときに、

「君はマイブラザーのガールフレンドだね、末っ子のブラザーから一松とのデートの隠し撮り写真を見たことがあるのさハニー」
とわけのわからない言葉を続けられた。

あーあ、トド松君の隠し撮り写真に、カラ松さんへの公開、
こりゃ完全に家に帰ったらトド松君、一松にぶっ飛ばされるだろうな・・・と心の中で思った。
「ああ、はい、どうもはじめまして」
と覚悟を決めてきちんと挨拶をした。

「おお、なんて美人でかわいいガールなんだ!一松も隅に置けないな〜」

「でも残念、俺とは出会うのが遅すぎた・・・今更君が僕にこころを奪われても、なんという障害が!!君をカラ松ガールにしてあげることが出来ない!!」
と空を見上げて語り始めた。

いや、別にカラ松ガールとやらになるつもりありませんから!とつっこんで良いのか悪いのか・・
完全に去るタイミングも逃してしまっていた。

「あ、では失礼しま・・」と去ろうとすると。


急にサングラスを外して、私に頭を下げてきた、
今度は、いったい何の茶番が始まるのか??
と身構えたところ、

「一松は、見ての通り、人間付き合いが上手くない、なかなか人に心を開くもの難しい奴だ。

一松を好きになってくれてありがとう、あいつは本当に優しい奴なんです」

「いつまでも、一松を支えてやってください、お願いします」

と急に真面目に頭を下げたままお願いされた。

その気持ちは私の胸にも響いてよくわかっていた。

一松とは出会ってから、心開いて付き合う前にかなりの時間を要していた。
あの、ヒネた言葉の奥にある、優しさや繊細さに恋に落ちるまでたくさんの時間を共有したのだから。

カラ松さんの、家族としての心配はもう私にはよくわかっていた。

「あ、私は、ずっと一松の事が好きです。支えてもらっているのは私のほうなんです」と
つい本音で答えてしまった。

「だから、私のほうこそ、ありがとうございます。カラ松さん」

と頭を下げた。
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