短篇
□私に分けて
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ここ、2週間くらい彼氏の一松に会えてない。
付き合ってからは、ほぼ、毎週末には、
あってご飯を食べるか、うちに来てゆっくりするようなデートをしていたのだが、
ラインを送っても、既読にはなるのだが、
返信は無い。
言葉通り、猫のような気まぐれな彼氏なので、
出かけるような気分でではないのか、
また、彼の楽しそうな、6人兄弟で
わちゃわちゃ何かしているのだろうか。
何度も、こちらから連絡するのも気が引けて、
でも、気になってというモヤモヤしていた。
一松が、やってこない週末を二回越えて、
また、月曜日がやってきた。
いつもどおり、会社に行って、
月曜の午前中ということもあり、バタバタと忙しく仕事をして、14時をすぎて遅めのランチに出たときに。
「あれ、咲乃ちゃん、仕事?」と彼とソックリな人に声を掛けられた。
彼の兄弟は、6つ子で、同じ顔が6つある。
もちろん、彼氏の一松は見分けられるのだが、
他の兄弟に関してはまだ見分ける自信が無い。
とまどいながら、
「こんにちは、えーと・・・。」と言いよどむと。
「ああ、松野家長男おそ松です。なになに、ランチ??やっぱOL服もそそるよね〜、エロいね〜やっぱ一松にはもったいないな〜ちょっとストッキング破らせてくれない?」
と、セクハラまがいの事をいいながらついてくる。
お目当てのランチの店までついてきたので、
「私はこれから、お昼で、午後も仕事なので失礼します」
と嫌味っぽく言い切っても、
「大丈夫だよ!今日パチンコ勝ったから、割り勘でもいいよ〜」と、とうとう一緒にランチまですることになってしまった。
席に着くと、いきなり、
「それで、どうなの?最近一松とは?」
と聞かれたくないことを切り出され、
「別に・・・普通ですよ・・」と答えるしかなかった。
連絡が無いとか、会いたいとかを、彼の兄弟に相談するのはちょっと気が引けていた。
「一松は、ああ見えてさ、傷つきやすいんだよ。
人と距離とってるのも、その証拠なんだ。」
と、さっきのセクハラまがいのはつげんとは打って変わって、兄貴らしい表情で語りだした。
「でも、その分、人に痛みに敏感なんだ。」
と言って、
「ちょっと色々あったからさ、一松からは、あんたの所、行きづらいと思うから、
会いにきてやってよ」
と言い残し、ランチを終えて出て行ったしまった。
そして、おそ松の分のランチ代も会計して、
割り勘って言ったくせに、これだからニートは!!と怒りを残して、仕事に戻っていった。