短篇

□昔の約束を彼女は覚えているだろうか(前編)
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「大人になったら結婚しよう」

そんな幼稚園児がするような約束をしたことがある。

大人でもないけれど、もうそんなに無邪気でもない小学生のときである。



___________

今日もハロワ−クの帰り道、
バイトのほうが給料いいんじゃないかと思うような求人ばかり、

正社員に拘って、保険や福利厚生に多くを望めば、もちろん難しい。
トボトボと帰路につく

自分を常識人とか、就職もちろんまもなく!とか
親や兄弟に啖呵を切ってるものの、

過ごしている毎日は、他の兄弟たちと変わらない。

それならいっそ、開き直って、
他の兄弟たちと同じように遊んで暮らしても
変わりないだろうと心の中で思っているあたり、

僕もなかなかのクズと自分で苦笑する。

家に帰ると、
いつもどうりの光景で、

平日の昼間だと言うのに
兄弟4人は居間にいて、
長男はマンガを読んで、次男は鏡でキメていて、4男5男はトランプをして遊んでいる。

末っ子は出かけていたが、またオシャレして
カフェでも行っているんだろう。

ネクタイを緩めて、僕もドカっと座る。

また、小言を言われるんじゃないかと身構えている長男は、俺から目をそらし
トランプに加わろうとしている。

今日は、俺も疲れていて、何も突っ込みを入れる気にもならない。


「兄さん」と言って、一松が温かいお茶を入れてくれて僕の前に置いてくれる。

やっと、ホッと一息ついて、一松にありがとうとお礼を言う。

「今日はどうだった?」「う〜難しいね」などなど
一松と話をしていると、


ガラガラと扉が開いて、トド松が帰ってきた。

いつもなら、そのまま2階へ行って着替えてくるのに珍しく、そのまま居間に入ってきて

「ねえねえ、今日、超カワイイ女の子に声掛けられちゃった!」と笑いながら末っ子が話す。

皆興味なさげに
「勧誘じゃねーの」
「ふっ、カラ松ガールに俺の事を聞かれたか?」
「興味ない」
「だれだれ〜野球誘われたの〜」

などなど勝手な返答を兄弟たちは言う。
「あ〜はいはい」
と僕もおざなりに相槌をうつ。

「でも、ちょっと変わってた、兄さんたちの知り合いとか、昔の同級生とかかな〜」と
トド松は首を傾げて言う。

それに興味をもった僕を含んだ5人が円卓を取り囲む。

「えっ?どういうこと?俺たちの知り合いってこと?」とおそ松兄さんが聞く。

「うーん。たぶん。」

「道であったら、ビックリした顔で僕をじっとみてくるから
こんにちは〜!って声かけたら、こんにちはって返してくれて、

ご兄弟は、お元気ですかって聞かれたんだ

だから、
「兄のお知り合いですか?名前は?」って聞いたら、

僕が答える前に、
やっぱりいいです。って言って走って言っちゃたから」

なんだったんだろうと、トド松がぼやく。
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