Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

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最初の印象は、なんか違和感だらけの女・・・だった。

顔が可愛くて成績優秀、学級委員、控えめいつも笑顔ということで、クラス男たちからも人気の莉乃

莉乃の事を悪く言ったら、きっとおかしい奴だと思われるだろう。

でも俺には、彼女がどんな良い笑顔していても、無表情に見えてくる。なにもかもな演技してるようなそんな気がしてくる。

でもそんなことは、人気者の莉乃に夢中なうちの兄弟たちに言っても、理解されないだろう。

とにかく、この女には近づかないのが一番だと判断した。
まあ、判断しようがするまいが、
俺みたいなクラスでも誰とも喋らないクズみたいな男子と関ることなんてないだろうけど。
俺はいつも、昼休みは教室をでる。
喧騒のような教室で食べるのはゴメンだし、
年中家で顔つき合わせている兄弟たちとも学校まで来て一緒に食べようとは思わない。

教室を出て、北口の昇降口まで下り始めた、
そこは誰もいないし、
用務員さんがこっそり離れで買っている猫がいていつも一緒に過ごすのが気に入っている。

今日もいつものように、弁当を食べながら、
猫に家からこっそり持ってきた煮干でもあげながら過ごすつもりでいた。

降りていくと珍しく人影が見えた。
女生徒らしい、こっそりみると、莉乃だった、
いつものような人当たりのよさそうな明るい笑顔ではなく、
感情のない無表情でチカラを抜いているように見えた。猫の隣に座り、一人を楽しむようにじっと動かずにいた。

それはなんだか、それが彼女の本当の姿に見えた。そして、それは人にはばれてはいけない彼女の隠してる姿に見えた。
俺はそっとその場を離れようとしたところで、
一足早く、

彼女の隣に座っていた猫がニャアと鳴いて俺の足元まで走ってきてしまった。

莉乃はさっと立ち上がり
「誰?・・・」と言った。

俺は観念して出て行った。

莉乃は意外なことに、
「あ、松野・・・一松くん」
と俺の名前を言った。
彼女が、俺の名前を知ってることと、見分けが出来ていることに驚いた。

「わかるんだ」と俺はなんだかトンチンカンな返しをしてしまった。

「うん、なんとなく、おそ松くんとかチョロ松くんとは委員が一緒だし」
「それに・・・」と彼女はことばを濁した。

そして、いつもの、パッとした笑顔に戻り
「ここでいつも食べてるの?邪魔してゴメンね」
と言って立ち上がり校舎に戻ろうとした。
俺は思わず彼女の腕をつかんだ。
ビックリした彼女が振り返るで、腕を振り払われるようなことは無かった。

こんな校舎の一角で会っただけなのに、
勘違い野郎だときっと思われるだろうなと思ったけど、
いつも思ってた言葉がとまらなかった、

「また、ここに来なよ」「ここでは笑わなくていいから」

と目を見ずに言った。

いつの間にか、掴んでいた彼女の腕が震えていた。
顔を上げてみると、怒っているような泣いている様な見たことの無いような表情で彼女はいた。

「どうして?」と言ったまま黙り。
「どうしてわかったの?」と言い残し、彼女は去っていった。

俺は自分の行動に、後悔しながらも、
彼女の、笑顔以外の表情を自分がさせたことに
満足している自分もいた。

「彼女は明日は来るだろうか?」つぶやいたら、足元で猫がニャアと鳴いた。

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