Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

□(5)
1ページ/5ページ

寒いとクシャミをした彼女に、
思わず、パーカーをかぶせていた。

彼女は、驚いて、遠慮していた。
そりゃそうだよな、別に友達でも、ましてや彼氏でもない、男の服なんて気持ち悪いよな、
俺は何調子乗ってるんだ。

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
「ありがとう」と腕を通して、
パーカーにすっぽり包まれ、
首まですっぽり埋まってる彼女が、やばいくらいに可愛く見えて動揺する。

これから、どんどん寒くなるのに、きっと彼女は律儀にここに来るだろうと思うと、
寒さから守ってやりたくて、
思わず、

「明日から」「図書準備室、人いないから」などと、曖昧に誘うような誘わないような、かっこ悪いセリフを残して立ち去ってしまった。

俺はいったい何をやってるんだろう。

最初は、ただ、優等生ぶってる変な女に見えて、
でもここのんびりと息抜きをしてるところを見たときに。、
この閉鎖的な社会を頑張って切り抜けようとしている彼女に少しでも平穏を与えてあげたいと思っていた。
一方的だ彼女への思いはたんなる同情だと思っていた。


でも、最近おかしい、
彼女が松野家にやってきて以来、
異様に十四松になつかれてて、彼女にまとわりついて、十四松が彼女に抱きついているのを見るたび、

長兄や可愛い末弟が、辞書や資料本などを忘れたといって理由を付けては彼女に借りに来るたび、
まあ、それは同じクラスのチョロ松兄さんがいつも俺の持って行けと蹴散らしているけど。

しまいには、明らかに彼女に気があるだろうチョロ松兄さんと、放課後遅くまで仕事したり、連れ立って歩いているのを見ると、

なんだか、ザワザワしてくるのだ。
彼女の本当に姿を知ってるのは自分だけと言う独占欲だろうか。

いや、そうではない。

この気持ちに付ける名前はもう、気がついていたが、
俺はもう、何も知らないふりをする。
これ以上距離を縮めるつもりはないのだから。

俺はこれまでもこれからも、周りと合わせるつもりはないし、

友情や仲間、ましてや彼女なんて、俺が生きて行く上では、まったく必要ないものなのだから。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ