Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

□弟の彼女(不器用な彼女(6)
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彼女から預かったパーカーは、
一松に余計なことを言ってしまいそうで
そのまま顔見て返すことが出来ず、

途中で出会った、トド松に、
「これ一松に渡しておいて」と頼んでしまった。
末弟は、「うん、いいよ!」と快諾してくれた。
(そしてそのパーカーは結局回りまわって十四松が届けにきていたけど・・・)


次の日に、学校へ行くと、
なんだかチラチラといつも以上に注目されている気がした。

まあ、六つ子なんて変わった環境にいるせいで
周りから振り返られたり、
おまえは、なんの松だ?なんて毎日のように
教師にも同級生にもからかわれているので
特段気にするようなことではなかったが、

なんだか、気になる視線だった。

同じクラスの一松も同じように感じているだろうが、
振り返って様子を見ると、いつもと同じように世界に一人でいるような顔ををして
座っている。

その奇妙な視線の真相は、
放課後になって、隣のクラスの末弟によって、解明された。

うちのクラスのドアまでやってきて、
「チョロ松兄さん!チョロ松兄さん!一松兄さん!一松兄さん!ちょっと来て!」
とそろそろと呼んで来た。

学校で、声を掛けるなんて珍しいなと思いながらも、
一松にも声をかけて、3人でひとけのない踊り場までやってきた。

「トド松、どうした?」と聞くと、
いつもわりと落ち着いている末弟も
珍しく焦ったように、

「ねえ、女の子たちの噂話で聞いたんだけどさ。」
「昨日の放課後さ、教室で、僕たち六人の誰かが、教室で女の子とエッチしてたってすごい話題になってるんだ」
さすが、トド松、女の子たちの話題にも精通して・・と冷静に思ったところで、

「ええっーーー!どういうことだよ!!教室でエッ・エッエエエエッチ??」
と取り乱してしまった。

トド松は笑って、
「その反応、さすが女の子が絡むとポンコツなチョロ松兄さんだね、
その反応だと、もちろんチョロ松兄さんじゃなさそうだね、
じゃ、誰だろう、やっぱおそ松兄さんかな?
でも、そんなことあったら、おそ松兄さんだったら、家でぺラペラ自慢しそうだよね、えーじゃあ、まさかカラ松・・うーんなさそうだな〜・・・」

と可笑しそうに饒舌に末っ子は話し続けていた。一応、お前の兄貴の一松もこの場所にいるんだが、
その可能性はまったく考えていないようだった。

俺はそっと隣に立っている、一松を見たが、
いつもと同じ表情で話を聞いてるか聞いてないがわからないが、一言も話さずにいるので、
真相は全く読めなかった。
この間の昼休みに、何があったかはわからないが、
一松のパーカーを莉乃ちゃんに貸していたのは確かだろう、

それに、家に来たときも、クラスの様子でも
他人のように振舞ってるのは、

二人は隠れて付き合ってるんじゃないかと、
もしくは、付き合って無くても好意以上のもはお互いにあるだろうと思っていた俺は、

一松にも可能性があるのかもと考えていた、

つい、口に出していた。
「一松は?」と言うと、

俺の目を見ずに、「何が?」と興味なさそうに言った。
俺は、一松に対してムっとして、
「お前にはなにか心当たりあるんじゃねーか」と言ってしまった。

そのまま一松は黙ってしまって、

空気を読むのが最高に上手い、トド松は、
「やめなよ、チョロ松兄さん、一松兄さんに八つ当たりするのは、
一松兄さんのはず無いよ、
だって相手は、莉乃ちゃんだって、もっぱらの噂だもん。」

と末弟は可愛い顔で俺に爆弾を落としていった。
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