Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

□弟の彼女(番外編)
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あの日、
トド松が、放課後珍しく、僕と一松を呼び出して、

うわさの事を伝えに来た。
やはり、三人で考えても埒が明かず、
一度家に帰って、上二人の兄さんに
とにかく相談しようと言うことになった。

どーしようもない兄だが、
やはりこういうときは頼りにしてしまうのだ。


3人で、教室に戻ると、
女の子たちの、ガヤガヤした声と
怒鳴り声が聞こえてきた。

なにか揉め事かな・・・と教室を開けるのを
躊躇しているのに。
トド松は、どんな揉め事でも諌める自信があるのだろう、

平気でスタスタ進み、教室のドアを開けた。

そこには、隣のクラスの女子と、うちのクラスの女子たちが、

例の俺たちと噂の渦中にいる人物、莉乃ちゃんを取り囲み、
揉めている様だった。

僕たちがドアを開けると、
さすがの、女子に人気のトド松に見られるのは
マズイと思ったのか、

ばらばらと女の子たちは、後ろの出口から出て行った。

教室には、あきらかに殴られたのだろう
頬を真っ赤に腫れ上がらせて、口端には少し血の滲んでいる彼女が立っていた。

「莉乃ちゃん だいじょ・・」と駆け寄ろうとした、トド松を自然と制止していた、

本当は、僕だって、駆け寄って心配を伝えて
話を聞いてあげたかった。
それ以上の事を言ってしまえば、
いまその場に頼りなさそうに立っている彼女のそばに行き、ただ、抱きしめたかった。

でも。彼女の事が好きだからこそ、
彼女が求めている人が誰か、痛いほどにわかっていた。

「一松」と僕は後ろに立っている少々頼りない弟の名前を呼んで、肩を押した。
そして、僕は乱暴に自分のカバンを取りに行き、
そのまま、末弟の腕を引っ張って、家路に向かった。

5人も兄がいるせいか空気が読むのが上手な末弟は。
状況がわからないながらも、僕の気持ちを
察したようで、

「チョロ松兄さん、今日、僕が奢るから
何か食べて帰ろうよ!
あ、駅前の赤鬼ラーメンにしよう。
あそこのラーメンカラくてカラくて、汗も涙も止まらないっていうし」「ね」と笑顔で言ってくる。

僕は、兄貴の癖に弟に優しくされた気持ちと、今までの悲しい気持ちが押し寄せてきて
情けなくボロボロ涙が出てきた。

トド松が背中をバンバンたたきながら。
「ほらほら兄さん!泣くのは
ラーメン食べてからだよ!激辛注文するんだから!」と笑って言った。
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