Main(長編/不器用な彼女シリーズ)

□夏の終わり(前編)
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高校3年の夏休みがそろそろ終わろうとしている。

不器用ながら手に入れた恋愛は、今のところ、彼女に愛想つかされずに、
まだ俺の傍にいてくれている。

夏休みは兄弟もいたが、うちに泊まりに来てくれたり、花火大会に行ったりと、
普通に一緒に過ごしていた。

でも、俺も、高校生男子。
彼女がいて、いつもやたらに白い肌や
細い手足、キスをすると嬉しそうにすぐに赤く染まる頬なんかを見ていると

それなりにそれ以上の欲望を持ってしまう。

夏休み直前の試験休みに、初めてラブホテルというものに、二人で行ってみたが、

あんなに気持ちよさそうにしていたのに、
実際に挿入れようとすると、
彼女の体が固くなって痛がり、息を止めて耐える姿を見てたら、

俺の何が何でも奥まで挿入したい欲望を、寸でのところで押しのけて、優しくしてしまった。

まあ、それはそれで気持ちよかったし

今まで服の上からしていたスキンシップに比べたら
信じられないくらいの幸福だが、

一度、そのような中途半端な状況で事が済んでしまうと
なかなか2回目を言い出せない。

前回行ったホテルの清算時にもらった半額クーポンは、あと4日で期限が切れる。

懐が寂しい高校生としては、これを使ってしまいたいと考えるが
そんなことを気軽に言い出して誘えるような人間性なら、とっくに友達だってできている。

ふぅと息を吐いて、二階から外を眺める。





「一松兄さん〜、莉乃ちゃん下に来てたからつれてきたよ〜」
とトド松の声がする。

トド松と一緒に莉乃が襖をあけて入ってくる。

「一松おはよう、今日も暑いね〜」と
ノースリーブのワンピース姿で、
手で顔をパタパタと仰いでいる。

俺は邪な事を考えてたせいか直視できずに
「ああ」とか「うん」とぼそぼそ返事をする。

それを見てた、トド松が
あざとい笑顔で俺を見てくる。

「じゃあ、冷たいジュースとかアイス買ってきてあげるよ!」とさらに笑顔で俺に言ってくる。



莉乃がトド松に一緒に行こうか?と言ってるけど、
全然、ゆっくりしてて〜など会話をしている


「だから、ほら一松兄さん!」と手を出してくる。
ああ、と思って、

「お金使いきるなよ」
と言ってジャージから財布代わりのがま口を出してそのままトド松に渡す。

「ありがとう一松兄さん、僕のラテも買ってきていい??」にっこり笑い部屋を出て行く。

静かになった部屋の中で
俺と、莉乃の二人になる。

莉乃が窓辺に寄ってきて、

暑いけど、風が気持ちいいねと笑って
隣に座り、
俺の膝にいるネコを撫でてくる、

ノースリーブの細い肩が俺に当たる。

サラサラとした髪が揺れてる横顔を見て、
ああ、カワイイなと思う。

「えっ?!」と莉乃が真っ赤になって俺を見上げる。

「いま、かわいいって言った?」

「は??言ってないし」ヤベエ、思わず口に出たみたいだ。それともコイツはエスパーか?

「えー、絶対今、一松かわいいってつぶやいたし!」
「言ってないし。嘘だし!」

と子供のような言いあいが続く。

「ふーん、嘘なんだ」
「え?」
「かわいいって嘘なんだ」と莉乃は俺を見てイジワルっぽくいう、
嵌めやがってと思うけど

「嘘じゃないけど」とボソッと言うと
嬉しそうに「ありがとう」と笑って抱きついてくる。俺の首に両腕をまわしてぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
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