Main(長編/不器用な彼女シリーズ)
□チョロ松とバレンタイン
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今日は、バレンタインだ。
と、いっても、別に彼女がいるわけでもなく
もらえるような当てもない。
長男のおそ松や末弟のトド松なんかは
軽い調子で女子たちと友チョコだの騒いで
やりとりしてるし、
カラ松なんかは、一応演劇部として後輩部員から義理チョコなどをたくさん貰ってくる。
十四松・・・は、よくわからない。
すぐ下の一松は、去年の末から付き合い始めた彼女がいて、初めてのバレンタインだから、きっと盛り上がってるんだろうなと正直一番羨ましい。
いつも通りに学校を終えて校門を出る。
もうすぐ高校2年生も終わる。
彼女も結局できなかったし、
ほんの少しいいなと思っていた女の子は弟の彼女になるし、
まあ、良い事は無かったけど
兄弟そろって無事に高校3年生になれそうだし
まあ、平穏が一番だと思う。
学校を出たところで、
「チョロ松君」と声を掛けられる。
振り向くと、莉乃ちゃんが立っていた、
外で待っていたのか、少し頬が赤い。
「今帰り?あ、一松待ってるの?」と声を掛ける。
莉乃ちゃんは、一松の彼女だ。去年なんだかんだ問題を起こしながらも、
やっと、去年のクリスマス直前に無事に付き合い始めて
俺たち兄弟は、妬みながらも応援もしていた。
莉乃ちゃんは、
「ううん。チョロ松君待ってたの。良かったら一緒に帰らない?」
と声をかけてくる。
僕は不覚にも、一瞬喜んでしまったが、
なにぶん、弟の彼女だ。
なにか一松に対しての相談とか不満とか?
なにか問題があるのだろうかと、兄スイッチが入って心配になる。
「うん、いいよ」と言って並んで歩き始める。
「一松とはどう?上手く言ってる?」と何気なく聞く。
「うん、まあ楽しいかな。一松って映画とか結構見てるから話が会うし」
と少し顔を赤くして答える。
「あ、わかる、僕も家のDVDで映画見るときは絶対一松誘うから、他のやつらはまともに見ないし感想もイマイチだけど
一松はけっこう深くみてるから話が面白良いよな」
「そうそう、そうなんだよね」
と、莉乃ちゃんも嬉しそうに笑う。
なんだか、兄弟の話を、他の人とするのはなんだかくすぐったいなと思う。
でも人とは絶対に距離を置いて友達も頑なに作らないあの一松も、結構上手くやってるんだなと安心する。
「チョロ松君、ちょっと寄り道しない?」
と脇にある公園を指差す。
「いいけど」と言いながら僕は疑問に思う。
一松と上手く言ってて相談もなさそうだし、
なんなのだろう?ただたんに、偶然校門であっただけなのかと自分で完結する。
たわいないおしゃべりをしながら公園を歩く、
公園にある橋に差し掛かったところで、
莉乃ちゃんは振り向いて、
「チョロ松くん、これ、良かったら貰ってほしいと思って」
と言って小さな可愛い紙袋を渡してくる。