Main(長編/moonlight)

□moonlightプロローグ
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高校に、入学して二度目の桜を見た。

「2−3」と書かれた教室に入ると、
知った顔もちらほら見ながら、新しく見る顔に新鮮な気持ちにもなった。

担任が適当に振り分けた席順がすでに決まっており、
一年間使う机に、自分の名前シールが張ってある。

私は自分のシールを探して
ガタンと席に着いた。

一番後ろの、窓から2列目、なかなか良い席だと満足して、
自分の席を片付け始めた。

窓を何気なく見てみると、突風が吹き一面のピンクの花びらが舞い上がっていた。
「うわぁ。綺麗・・・」
思わずつぶやくと、
新しく隣の席になっただろう、窓際に座っていた男子が振り向いた。


軽く目が合ったときに、
不意に私は動悸が早くなった。

その男の子の、何も見てないような、
何も興味ないような、
その動作に、気持ちが動いた。

「あ、よろしく私は、倉木咲乃で、
一年のときは1クラスで・・」

と話しかけてみたが、

聞こえているのか、いないのか、
その男の子は、そのまま顔を窓の桜吹雪のほうに向けていた。

あ、えーと・・・と戸惑ってると、
後ろから、
「もう!一松兄さん!女の子にはきちんと自己紹介しなきゃ!」
と同じ顔の男の子が、会話に飛び込んできた。

窓際の男子も、このあかるく飛び込んできた男子も、この高校では有名な六つ子である。

高校は、普通科3クラスなので、六つ子のうちの二人は必ず同じクラスになる。

去年は、長男のおそ松くんと、十四松くんが同じクラスで、
二人とも、底抜けに明るくて親切な人気者だったので、
松野家六つ子は、全員そういう人柄だと勝手に思っていたが、
やはり、それぞれ個性はあるらしい。

「こんにちは!去年は1クラスだったよね。
おそ松兄さんと十四松兄さんが、咲乃ちゃんって可愛い子がいるって言ってたから
覚えてるんだ!

僕は、6男末っ子トド松です。
こっちは4男の一松兄さん、一年間よろしくね!」

と、おそ松よりも明るくて、同じ顔なのに、キュートって言葉がピッタリの笑顔で話してくれる。

「ありがとう、よろしくね」
と挨拶をする。

隣の席の、確か一松兄さんって呼ばれてた人は、
窓を向いたまま会話にも参加してこない。


なんだか、前途多難な高校2年になりそうだなと思いながらも、


隣の席の、男の子が、もう一度こっちと向いてくれればよいのにと、

嵐の様な桜吹雪を見ながら、すこし思っていた。
 

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