六つ子と合コンでキスをする話。

□紫のパーカーの人
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紫パーカーの人が座っている。

「よ、よろしくおねがいします」
挨拶をする。

「ああ」と短く返事だけされて、また沈黙が続く。
確か、四男の一松さんと挨拶をされた。

他の、兄弟が、すでに大声で騒いだり
女の子と喋ったり楽しそうにしている中で

この人だけは、まだ何も喋らずにムスっと座っている。
私と同じく、数あわせで無理矢理つれてこられたのかな?とも思う。


「し・・仕事、な・・仕事何してるの?」
一松さんは小さい声でぼそぼそと聞いてくる。

あ、一応頑張って合コンに参加してるんだ・・健気だなとちょっと可愛くなってしまった。

「あ、会社員で働いていて、主に文房具のデザイン関連の・・・」
と仕事の説明を始めたところで、

喉が痒くなって私は「クシュ」とクシャミをする。
あれ?
と思う間に

「クシュ、ハキシュ。ご、ごめんなさい、くしゅ、ハキュ。クシュ」
と私は席を立つ。

しばらく収まってたけど、覚えのある症状だ。

私は慌てて、カバンを持って隣の席の一松さんに、
「ちょっと失礼しますクシュ。」と声をかけて席をはずす。


トイレに行って、軽く目を洗ってうがいをする。
そして、居酒屋のキッチンのところでお冷を貰って、常備している薬を飲む。

そして、居酒屋のドアを開けて、外のベンチに行って冷たい空気をすう。

大丈夫、こうしていれば、くしゃみと目のかゆみが10分くらいで収まる。

私はアレルギーが少しある。
いつもは平気なのだけど、動物の毛とかで
症状が出る。動物アレルギーというやつだ。

世の中には、動物好きの人が多いので
私は必至に隠している。

たぶん、今日の一松さんも猫を飼っているのだろう。
失礼な事をしたと、私は自己嫌悪に陥る。

少し休んで症状が出なくなったら戻って謝ろうと考えていると

居酒屋のドアがガラガラ開いて、先ほど隣に座ってた一松さんがでてきた。

呆れて帰るのかな?と思ったけど、
つかつかと歩いて、私の隣にくると
「大丈夫?」と声をかけてくる。

「席をはずして失礼しました。」私は謝る。
ココまで追いかけてきて心配してくれるなんて・・と私はちょっと嬉しくなる。

見ると、一松さんは、この寒いのにさっきのパーカーを脱いでTシャツ一枚だった。

私は驚いて、「一松さん、寒くないですか?パーカーは?」
と聞いて私はハッとする。

きっと隣の席の友達が、私が動物アレルギーというのをばらしたのだろう。
だから猫の毛がついているパーカーを脱いできてくれたのかもしれない
と私は真っ青になって思う。

「ごめんなさい!私の友人何か言いましたか?
失礼な事してごめんなさい」

「あ〜、うん、ちょっと聞いた、アレルギーあるって。
いや、俺もココ来る前、猫に餌やってきたからパーカーに毛がついてたかも。悪かった」

「いえいえ」「こちらこそ」とか言いながら二人でちょっとだけ笑って和む。

「猫好きなんですか?」
私が聞くと

「まあまあ」と答える。たぶん、すごい猫好きなんだろうなと思う。

「あ、とにかく席に戻りましょう!Tシャツじゃ寒いですよ、はやくパーカー着てください。
私に気を使うのなら、戻ったら席替えすれば良いですよ」

そういええ私は、居酒屋に戻ろうとすると、

「席替えしたくない」一松さんは
ボソッと言う。
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