六つ子と合コンでキスをする話。

□緑のパーカーの人
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私の隣の人は、えっと、緑のパーカーの人だ。

「こんばんは」挨拶をすると、ちょっとはにかんだ感じで
「はじめまして、三男のチョロ松です」
きちんと挨拶をしてくれる。

個性が強い人たちだなとちょっと引いてたけど、
チョロ松さんは、やわらかそうな人でちょっと安心する。

「仕事なにしてるんですか?」

「私は出版社で働いています。と言っても編集とかではなくて営業で、出版部数を考えたり、販促物か企画したり・・」

「そうなんだ、出版業界も営業も興味ある、ねえもっと聞かせてよ」

チョロ松さんは、私なんかの話をきちんと聞いてくれてちょっと嬉しくなる。

「あ、はい、私の・・」とまた話し始めたところで

「こら十四松、ちゃんと座って!」
「おそ松兄さん!勝手にモツ煮何個も注文しないで」
「カラ松、とりあえずサングラスは外して、失礼だろう」
「一松、飲み物注文した?わかった僕が頼むから何がいい?」

チョロ松さんは、すごいスピードで他の兄弟に次々と目を配り
一段落して

「あ、ごめんなさいお話途中で・・」

「いえいえ、チョロ松さんは三男なんですよね、なんだかお兄さんみたいですね」

「そんなことは無いんだけど、あいつらやりたい放題だから、まあ、仕方ないよ」

冗談なのか本気なのか、チョロ松さんは笑って言う。

それからは、おたがい緊張も解けて、映画や
ドラマの話をしたりした。
たぶん、ちょっとオタクなんだろうと思う。
でもそういう人って出版や芸能関係にも詳しいから
私はちょっと嬉しかった。

でも、もうちょっと話したいと思うのに、
途中で

「おそ松兄さん!お酒を勝手にボトル入れないで!」
「カラ松酔いすぎ、つぎはウーロン茶注文したからとりあえずそれ飲んで」

ガチャンと音がしてチョロ松さんがすぐに
「十四松!ほら、こぼした、いま布巾貰ってくるから動くなよ」
と言って立ち上がって厨房へ行く。

私はポツンと取り残されて、その間にチョロ松さんは
汚れたテーブルを拭いたり兄弟の世話をしている。

一段落したところで、
「何度もごめんなさい、あいつらが・・」
チョロ松さんが戻ってきたところで
私は、チョロ松さんの手を取って
お手洗いに続く通路まで引っ張って連れて来る。

チョロ松さんは素直に付いてきてくれて
立ち止まったところで
「えーっと。ゴメン、怒ってますか?」

「怒ってないです」

と言って私が振りかえると、眉毛を下げてへの字口で困った顔をしている。

私は、思わず
首に手を回して、背伸びをして
チョロ松さんのへの字口に私の唇を押し付ける。

ちゅっと軽い音をさせてすぐに離れる。

「えっ、今ってええええ?」チョロ松さんは真っ赤になって私を見てくれる。
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