短篇

□昔の約束を彼女は覚えているだろうか(前編)
2ページ/4ページ

「ふーん、なんだろうな、同級生とかかね〜」

と皆は疑問に抱きながらも、
皆は興味を失っているようだ。

6人も同じ顔がいて、町をうろつき回っていたら、
誰が誰の知り合いになったとか、人間違いされたとかは日常だった。
と特に深くは考えない。

でも、僕は、なんだかザラついたものを感じた。

そんなことあるはずが無いけど、
でも、もしかしたら。

「トド松、どこであったの?何か特徴は?」
と僕は聞く。

女の子の話題に僕が喰いつくのは珍しいからか、
5人が驚いている。

「えっ、チョロ松兄さん珍しいね、駅前の大通りだよ。
特徴はうーん、本当に一瞬だったから覚えてないよ。
あっでも貝。」

「かい?」と5人が同時に繰り返す。

「貝殻のネックレスつけてた」とトド松が不思議そうに言う。

僕はそれを聞いて、
自分でも、わけがわからないけど、

体が勝手に駆け出していた。

靴を乱暴に履き、玄関を開けっ放しのまま
駅前に向かって走り出している。


僕の、頭の中には、ひとつだけ記憶がある、
それも強烈な記憶だ。



僕は、一度だけ、女の子と駆け落ちをしたことがあった。








次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ