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□春の窓(前編)
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会社の通用口を抜けて、やっと外にでる。

一日の仕事を終えて、天まで届きそうな近代的なタワービルの社員通用口を抜けて、

外の空気に触れるときが、一番ホッとする。

大学卒業して、就職して一年目。まだまだ慣れるだけで精一杯である。

今は会社に近い町でアパートを借りて一人暮らししている。
偶然にも、その町は、小学生の時に少しだけ住んでいた町だ。親のの関係ですぐに引っ越したが、
個性豊な町の住人たちの事はいまでも良く覚えている。


アパートに近いスーパーで買い物しようと、
夕方の喧騒を抜けようとしたときに、

カップルでいちゃつきながら、道の真ん中を
腕振って歩いている男の人から、ドンっと当たられた。

とっさの事で、
「すいません」と謝る。

私にぶつかった、ガタイの良い男は、
私をギロリと睨みつけ
「あぁ?気をつけろ」と凄んでくる。

「すいません・・」と、納得は言ってないが
もう一度謝ると、

(そっちが、ぶつかってきたんでしょ、彼女のまえだからって凄んで最低な男なんだよね)

どこからか声がした、
え?って思うと同時に、
男が、「てめえ、なんていった?ふざけんな!」と怒鳴って、私の胸ぐらを掴んできた。

「私じゃないです!ごめんなさい!」と私が言うと、またどこからか、

(すぐに暴力振るう男最低〜、頭悪いんだよね)

また、どこからか声がする、

「ふざけんなっ」と耳元で男に怒鳴られ、
こぶしを挙げられて、殴られる!と
目をつぶったときに、
「にゃあ」と泣いて、オレンジ色の猫が
胸元に落ちてきた。

それと同時に、目の前に、紫色の服を着た人が
目の前に立ったと思うと、

私の胸ぐらを掴んでいた男の手を掴んで
上に上げると、
もう片方の手で、お腹の当たりを強く殴ったかと思うと、
その男は、うめいて足元に崩れて動かなくなった。

紫色の服を着た男の人が、
「やべえ」とつぶやくと、

私が抱いていた猫が
「やべえ、逃げろ」と言った。

そのまま、「こっち」と腕を引っ張られて、
紫のパーカーを着ている男の人と、
オレンジ色の猫と、私でなぜか町を抜けるように
走って逃げた。

町外れまできて、ようやく息をつく。

あの猫は何?なんで私の気持ちをしゃべったの?
そもそも猫がしゃべるって?
助けてくれてありがとうっていわなきゃ

などなど思考は回るのに、
息がまだ整わず、はあはあと座り込んだ。

猫はいつの間にかいなくなっていて、
あの紫のパーカーの人もいなくなっていた。

すると突然後ろから、
頬に、冷たいものが当てられた。
ビックリして振り向くと、さっきの男の人が
水を渡してくれている。

「ありがとう」と言って受け取る。


そして、まじまじ顔を見て、何かを思いだす。

私は「あぁ〜!」と突然大きな声をだした。

「松野くんだよね!」と私が言うと、
その男の人は心底ビックリした顔をしていた。
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