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□(中編)
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「今日はっ、ゴメン」
と言い残して、彼女は走って帰っていった。

激しい後悔を俺はしながらも、
これで良かったんだと、思い返す。

もともと咲乃は、昔の知り合いって言うだけで、
俺たちとは、とくに俺とは全く違う世界に人間だと思った。

明るくて、可愛くて、それにしっかりしていて
きちんと働いて自活している。

俺みたいなクズには、口を利くことも無いような一軍の人間なのだ、

いずれ愛想をつかされるなら早い方が良い。

そう思って、謝らない理由、追いかけない理由を自分の中で反芻する。



そのうち、時間がたち、
兄弟たちが全員ガヤガヤと帰ってきた。

玄関に置いたままの梨の袋を見て
「一松兄さん、これどうしたの?」
トド松が聞いてくる。

「ん〜、おすそ分けって咲乃ちゃんが置いてった」
と俺は平然を装って言う。

兄弟たちは全員喜んで、
チョロ松兄さんが、剥いて来るよと言って
台所へ行った。


「あのさ」とトド松は意を決したように言う。

「咲乃ちゃんってさ、おかしいと思わない?」と真剣な顔で続ける。

おそ松兄さんとカラ松兄さんが
「はあ、トッティ何いってんだよ!」
「ふふ、女性とは、すべてが神秘な生き物だ」

などなど、兄弟たちがガヤガヤして
梨を剥いて戻ってきたチョロ松も参加して

兄弟6人でちゃぶ台を囲んで真剣に話し始める。


「で、おかしいって何が?」と
こういう場面では、頼りになる
おそ松兄さんが、聞き始める。

トド松は、悩みながらも切り出した。

「咲乃ちゃんは、僕らの小学校の同級生だって言っていたよね。
実際、僕らの事も覚えてて、僕らの名前も言ってくれたし・・・

でもなんで、十四松兄さん以外の、僕ら5人は
咲乃ちゃんのこと、だれも覚えてないの? 
あれだけ可愛い女の子のこと、いくら小学生だって、僕ら全員が忘れるのって不自然だと思わない??」

と一気にトド松は言う。

俺も、トド松の意見にハッとする。
十四松がすぐに気がついて同級生だと言ったことと、
本人が俺たちを知っていることで

もちろん信じきっていたが、
あの女の子大好きの、おそ松兄さんや、トド松までも全く記憶に無いのは、たしかに不自然だ。
他の、兄弟も、納得したらしくて、

「俺もちょっとそう思ってた、あんな可愛い女の子の事忘れるかな〜」
「確かに」
と各々納得している。

おそ松兄さんが、
「なあ、十四松、咲乃ちゃんが同級生って本当の事なんだよな」

と、十四松に詰め寄る。
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