short dream
□HANABI
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「これは・・・」
空に咲く大輪に男は目を見開く。
「驚いた。こんな所で花火が見られるなんて」
「ハナビ?」
山佐野は空を眺めながら説明する。その横顔は遠い故郷に思い馳せているようだった。
「初めて見たがなかなかだな」
「でしょう?綺麗だよね」
いつもは言い合いをしたり、あまり隣に居合わせたりしないのに、珍しい。
彼は彼女のそばから離れなかった。
ただ、その火の花々が空を彩り咲き続けるのを隣で見ていた。
「さてと、終わったことだし戻りましょう。」
「山佐野」
終わったの見届けて部屋に帰ろうとする彼女を引き止めるアベル
「帰りたいと思わないのか?」
きっとずっと前から疑問だったのだろう。彼にとってこんな施設に入り働く私達ことが・・・だが、まだ話せない。彼らには彼らの、私たちには私達のお互い立ち入ってはならないことだってあるのだから。
しかし、何も言わないのは公平な会話とならない。ならば一言こう返す他ない。
「今はその時ではないから。」
「ほう・・・そうか。」
わかった。まるで私の考えを読んでいるかのような彼の行動に胸がちくりと痛んだ。
遠い故郷思い浮かべて私はひとり眠りついた。
「しかし、私は君を還すつもりはない。わかっているだろう山佐野。」
誰もいない部屋でぽつりと男は呟いた。