他SS

□全ての感情を忘れるために
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(昨日は嫌な夢見たなぁ……)

もう見たくねぇな、そう思い目を閉じる。
夜風が気持ちいい。
もうこのまま寝てしまおうかと思っていると、
下から自分の名前を呼ばれた気がした。
木から降りると、そこには誰もいなく
気のせいかと思い戻ろうとした瞬間。

「やぁ、オビ。久しぶり!」

手を挙げ、ニカッと笑うトロウの姿が
目の前に見えた。
トロウは「驚いた?」とヘラヘラと笑っている。

「トロウ、お前ここで何やってんだよ!?」

ここは完全に敷地内。
こんな忍び込むかたちで入ってきていれば
いくらゼンも知り合っているとはいえ、
そう簡単に許すわけにはいかないだろう。

「兵に見つかる前に帰れ」
「大丈夫さ、そう簡単には見つからないよ」
「あのなぁ……」

そういう問題じゃないと追い出そうとすると

「オビ、あの子とどうなのさ」

急に持ちかけてきた話は、とても平常心では
いられない、そんな話題だった。

「オビ、あんたあの子に惚れてるだろう?」
「惚れてなんかいねぇよ」
「嘘だ〜」

オビはついカッとなってしまい、トロウを
強く睨んだ。
トロウはこの鋭い目を見て、オビの思いを悟った。

「オビ、ごめん……」
「いや……」

こんなオビは初めてだと、何かグサリと
心が痛んだ。

「トロウ、さっさと帰れ」

その声はとても暗く、強く一線を引くような
ものだった。

けれど、ここで引きたくない。

「オビ!」

名前を呼び、離れていくオビの腕を掴む。

「なに?」
「オビ」

ゆっくりと腕をオビの首もとへ持っていき
軽くキスを落とした。

「なに?今の」

思っていた反応とは違く、意外にも優しい声を
していた。
いや、それくらい呆れているというこ
とだろうか……
でも、今さら関係ない。

「オビ、付き合ってよ」

どう返ってくるか……
返事によっては諦めるつもりだった。

「どうする?オビ」

首もとから腕をほどき、離れようとした時
オビの手が腰に回ってきて、抱き寄せられた。

「いいよ、付き合ってあげる」

オビはイエスの答えを出した。

「そっか」

そっか、うん、と微笑む。

私を利用して、少しでもあの子への想いを
軽いものにしてほしい、その一心だった。

「利用して、とか考えてるんでしょ?」
「ははっ、まぁね」
「あんたにそんなこと思われるなんてね」
「悪くはないだろう?」
「まぁね」

腰から片手をトロウの後頭部へ移動させ、
キスを落とす。
徐々に深く、深く噛みつくように……

「ん、ふっ、あぁ……」

息がこぼれる。頭が真っ白になっていく。
離すまいと何度も角度を変えて、噛みつく。
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