他SS

□時を忘れ、意思を捨て
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蘭たちより一足先に帰国してきたコナンだったが、
なかなか薬の効果が切れず、『工藤新一』の姿から
戻れなく、空港で足止めをくらっていた。

「なぁ、博士〜いつになったら戻るんだこれ」
「わしに聞かれてものぅ…もう少しの辛抱じゃ新一」

人目のつかないところに身を潜め、体が戻るのを
待つ。まだか、まだかと待っていると、ヒールの
響く足音と共に、ピッポッパッと聞き覚えのある
プッシュ音が聞こえてきた。

(七つの子……だと!?)

心臓が鳴り響く。体が熱を帯びる。
体が戻るときのものではなく、ヤツらの仲間が
近くにいるという恐怖からのものだ。
今遭遇してしまえば、工藤新一だとわかり
殺されるだろう。一緒にいる博士も危ない。

(誰だ……!一体誰なんだ……!?)

来るなら来い、と待ち構えていると、現れたのは

「ベルモット……」

ベルモットだった。相手がベルモットとわかり
少し安心する。
ベルモットは、正体を知るものの組織のボスにも
ジンにも明かすことなく、逆に手を貸してくるよ
うな、丸っきり敵という相手ではなかった。

思わず名を声に出してしまった新一。
ベルモットはこちらに気づくなり、驚いた顔を
していた。
何せ、目の前にいるのはあの工藤新一だからだ。

「工藤、新一……」
「この姿で会うのは初めてだな」

よいしょ、と立ち上がり、ベルモットに近づく。

「テメーらのボスへのメールのプッシュ音が
聞こえたときはマジでビビったぜ。まぁ、相手が
オメーだったから命拾いしたな」

ベルモットは平常心を装い

「あら、アタシへの危機感はまるでないのね。
隙だらけよ、シルバーブレット」
「バーロ、オメーに殺る気があったら、
もう殺られてるっつーの」

ベルモットはフッと笑い、両手をあげて
「降参だわ」と言い放った。

「ねぇ、その姿はどうしたの?」

何故、工藤新一の姿でここにいるのかと
気になったようだ。
しかし、それは新一も同じ。何故、ベルモットが
ここにいるのか気になっていた。

「ちょっとロンドンに行ってたんだよ」
「ロンドン……なるほど、江戸川コナンじゃ
海外には行けないものね」

「シェリー、相変わらずすごいわ」と笑みを浮か
べる。
どこまでも鋭く、勘のいいヤツなんだと
新一も冷や汗をかく。

「オメーこそ、何してんだよ」
「アタシ?アタシはアメリカのほうに用があったの
よ」
「そうか」

ベルモットは「ねぇ」と新一に話しかけた。

「その姿、いつ戻るわけ?」
「わかんねぇよ……何故かまだ戻らねぇんだ」

顔をしかめ、ため息をこぼす。

「それじゃあ、ちょっと付き合ってくれない?」

その顔は何かを企んでいそうな顔。
不適な笑み、そして何を見据えているのだろうか
意図の掴めない瞳。

「嫌だね。つーか、この姿で歩き回れねぇっつーの。
いつ戻っちまうかわからないんだ」

断って、ベルモットから離れようとするもの

「そうじゃなくて」と肩を掴まれてしまった。

ベルモットは博士に「ちょっと彼借りるわね」と
いい、奥の立ち入り禁止区域に新一を連れて入って
行った。

「おい!何勝手に入ってんだよ!?バレたら……」
「大丈夫よ。人は来ないわよ」

新一の口元に指を運ぶ。

「何する気だベルモット」
「何って……せっかくこの姿で会えたのよ?
少し遊んでみたいじゃない」

新一は「はぁ?」と文句ありげな顔をする。

「やっぱりシルバーブレットはシルバーブレットね。
雰囲気そのままだわ」

新一の顔にそっと触れる。その手つきは
なんともいやらしいものだった。
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