他SS

□もう決めたことだから
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高校3年生となり、卒業後の進路調査も
行われるようになった。

「お前らー、ちゃんと進路考えろよなァ」

山田は教壇に肘をつき、怠そうに生徒たちに
指導する。そんなめんどくさそうな顔で言わ
れてもなおさらやる気を無くすだけだ。
多くの生徒がざわつき始めるとタイミングよく
鐘が鳴った。山田の一言で授業は終わり昼休みに
入る。

由多は穂乃香のもとへ向かい、一緒にお昼に
しようと誘う。少し前までは冷たく拒否され
たり、まともに相手してもらうことさえなかった
というのにこの進歩は一体何なのだろう……
今では2人でお昼を食べたり、休み時間も
一緒に過ごしたりと、一緒にいる時間が
増えた。これもあのキズナシステムのおかげ。

初めはキズナシステムなんてもの目障りだった。
しかし、このキズナシステムのおかげで救われた
人もいるし、素敵な出会いをした人もいる。
今ではあの出来事には感謝していた。

「由多、少しおかず増えたね」
「うん、穂乃香ちゃんのために増やしてみた」
「………」

『悪い虫がつかなくなるでしょ』

あの穂乃香の一言で由多は少しずつ食べる
ようになっていた。

「ねぇ、そういえば穂乃香ちゃんって進路
どうするか決めてるの?」
「いや。そういうそっちはどうなのよ」
「地元の大学でいいかなーと思ってる」
「ふーん……じゃ、私もそうする」
「えっ!?」

顔を真っ赤にさせて慌てる由多をよそに
箸を止めることなくご飯を口へ運ぶ穂乃香。

「ほ、穂乃香ちゃん…い、一緒の大学にするって
こと〜だよね?」
「そうだけど」

机にうつ伏せになり腕に顔を沈める。
頭を上げ、「俺と一緒に居てくれるの?」と
呟くと、穂乃香は迷いなくはっきりと答えた。

「そのつもり。もう決めたことだから」
「ほ、穂乃香ちゃん〜」
「なに、嫌なわけ?」
「違うよ!嬉しすぎて…その……」
「はいはい。ほら、さっさと食べれば?」
「うん……!」


そして晴れて同じ大学に入学した2人。
大学では、この性格の違いと美男美女という
ことでちょっとした有名カップルとなっていた。

「ねぇ由多」
「どうした?」
「はいこれ、チョコレート」
「あ、ありがと…にしても多くない?」

チョコレートを見つめ苦笑いの由多に対して、
穂乃香は口角を上げこう言い放った。

「太らせようと思って。悪い虫がつかなくなるでしょ?」

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