銀魂SS

□好きな人に注いで貰うお酒は格別
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「百華の手伝いアルか?」

神楽は日輪から「頼みがあるの」と呼び出されていた。
もちろん報酬も、団子もある。神楽は喜んで引き受けた。

頼みとは百華の手伝い。人手不足なのかと尋ねると、
今吉原では風邪が流行っているらしく百華でも数名
風邪人が出てきてしまったようだ。
彼女らに代わって、神楽に百華の仕事をお願いしたい
というのが日輪の頼みだった。

「そういうことならこの歌舞伎町の女王、神楽様に
どーんと任せるヨロシ。いつから来ればいいアルか?」
「ありがとう、頼もしいわ!そうねぇ…悪いんだけど
さっそく今日からお願いできるかしら……」
「もちろんいいアルヨ!それじゃ、銀ちゃんに
報告してからまた来るアル」

残った団子を一気に頬張り、一旦万事屋に帰ろうと
立ち上がる。

「神楽ちゃん急がなくていいからね」
「うん、それじゃちょっくら行ってくるネ」

地上に上がり、万事屋を目指して走り出す。
息を切らすことなく万事屋に辿り着いた神楽。
勢いよく戸を開けると、驚いた顔をして新八が奥から
顔を出す。

「神楽ちゃん!そんな乱暴に開けちゃ壊れちゃうよ」

「修理費馬鹿でかいんだからね」と万事屋の家計を
握るお母さんはため息をこぼして部屋に戻って行った。

「神楽ァー、オメー日輪んとこに呼び出されたんじゃ
ねぇのかよ。仕事は?」
「百華の手伝い頼まれたヨ。今日これから行ってくるアル」
「そうかィそうかィ…って!まじかよ!?
百華の手伝いって…帰りは?夜は?」

子離れしているようでしていないこの男。

「今日は日輪んとこに泊まってくるアル。明日からの
予定はまた今度話すネ。そんじゃ行ってくるアルー」
「い、いってらっしゃい……」
「神楽ちゃん、1人ですごいですね〜銀さんも
神楽ちゃん見習って仕事してください」
「は、はい……」



「お待たせヨー」

ひのやに戻ってきた神楽は日輪に奥に通された。
そこには百華の頭でもある月詠もいた。

「ツッキー!」
「久しぶりじゃな、神楽。当分の間、よろしく頼む」
「もちろんアルヨー!で、それってもしかして……」

月詠が持っていた紅い見覚えのある着物。
そう、これは鳳仙との一件の際に神楽が着ていたものだ。

「綺麗にしまっておいてくれたアルか……」
「もちろん!神楽ちゃんにはこれを着て仕事してもらうわよ」
「マジでか!」
「月詠、着付けお願いね?」
「あぁ。神楽、向こうで着替えよう」

久々に腕を通した着物。
月詠によって綺麗に着付けられた。

「ツッキーさすがアルナ。手慣れてるネ」
「まぁな…昔、日輪に習ったことじゃ。よし、できたぞ」

仕上げに髪を結ってもらい、鏡の前に立ってみる。
そこにいたのはまるで別人のようだった。
きっと、着る目的の違いがそう感じさせているのだろう。

「戻ろう。日輪が待ってる」
「うん」

日輪のもとへ戻ると、日輪は笑顔で「やっぱり似合ってる
わね!」と1人盛り上がっていた。

「日輪、神楽連れていくが…いいか?」
「え?あ、うん。月詠、よろしくね」
「あぁ」



月詠によって百華のもとへ案内された神楽。
そこには顔を合わせたことのある者も何人かいた。

「頭!お疲れ様です」
「みんな揃ってるか?」
「はい、問題ありません」
「そうか…それじゃ、さっそくじゃが前もって
伝えておいた当分の間、我々の応援に来てくれる
助っ人の紹介をする。神楽、こっちへ……
万事屋の神楽だ。みんな、いろいろ教えてあげてくれ」
「はい!」

ここまで大勢いると少し緊張してしまう。
紹介してくれている月詠の隣で固まって立ち尽くすことしか
できなかった。
月詠の「解散」の一言で肩の力が抜け、やっとまともな
酸素を吸った気がした。

「神楽、神楽に入ってもらう班のみんなだ」
「お久しぶりです!私のこと覚えてますか?」

神楽に「お久しぶりです」と声をかけるこの女性。
吉原篇で、晴太を庇おうと颯爽と現れた銀時だったが
逆に晴太にクナイをぶっ刺してしまったときに
「見ちゃったんですけど〜」と初めに名乗り出たあの時の女性だ。

「思い出したアル!あの時はあのクソ天パが世話に
なったアルナ……」
「いえいえそんな!あのお方には本当に感謝しています」
「みんなが協力してくれたから助かったんだヨ」

久々の再会で思い出話に夢中になっていると、
自然と先程までの緊張が解れていく気がした。

「神楽、少しは緊張解けたか?」
「ツッキー…おぅ!バッチリ!!」
「そうか、ならよかった。それじゃ、神楽をよろしく頼む」
「はい、頭!」



「今日はこの区域を廻る」

吉原全体の地図だ。
何度か吉原には訪ねたことがある神楽でも
こうして見ると吉原の規模の大きさには驚かされる。

「神楽さん、見廻り中に不審者や酔っ払い、
非合法の取り引きをしてる怪しい連中がいたら
片っ端から確保していってください」
「わかったアル。前から思ってたけど本当に百華は
すごいアルナ……」

こうして女たちだけで吉原の治安を守っていっているのだ。
地上の役人と比べると腐れ切った芋侍たちの不純さが
際立つ。お偉いさんのご機嫌ばかり伺うような役人よりも
よっぽどここの女たちのほうが芯がしっかりしている
ではないか。

「その言葉、頭に言ってください。私達への
言葉としては大きすぎますよ……」
「わっちらがこうしていられるのも全て頭のおかげ。
吉原が吉原であり続けられるのも頭、日輪様のおかげ。
わっちらはそんな大層なものじゃありんせん」
「みんな下向きになりすぎアル。みんなもすごいヨ?
みんながいなくちゃダメアル。じゃないと、吉原も
ツッキーも今の姿になんてなってないアルヨ」

そう、今この姿があるのは日輪、月詠、そして
月詠を慕い続けている百華の1人1人の力が
集まってこそのことなんだ。

「みんな、私も吉原のために頑張るアル!」

吉原のために精一杯力を尽くそう。
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