銀魂SS

□魔法の言葉
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自分の夜兎の力が怖かった。人を傷つけるこの
力が嫌いだった。そんな時、

「すげぇな、お前。悔しいけどかっこいいじゃ
ねぇかィ」

そう言って、笑いかけてくれた男の子。
彼の言葉に私は救われたんだ。そう、まるであれは
魔法の言葉のよう。



父の仕事について行き、初めて江戸にやって来た
神楽。初めて見るものばかりで、とてもワクワク
していた。

江戸へ発つ前、星海坊主から江戸の話を聞いてい
た神楽は、いろいろなところに興味を持ち、密かに
行きたがっていた。
しかし、星海坊主に手を引かれるまま歩いていると
どんどん町から離れていく。

「パ、パピー、どこ行くアルか?」

これはおかしい、そう思い星海坊主に尋ねてみる。
そうすると、返ってきた言葉は神楽の頭を真っ白に
した。

「今日は武州のほうへ行くんだよ」

武州……?それは一体どこ?

「江戸じゃないの?」
「うん。もしかして、江戸の町を見て回りたかっ
たのか?」
「うん……」

うん、そう口にすると顔を伏せた。
そんな神楽を見て慌てふためく星海坊主。

「帰りに江戸観光しようか!仕事が終わった後なら
ゆっくり楽しめていいと思うよ!?」

満面の笑みを神楽に向けると、神楽も次第に明る
さを取り戻した。

「約束アルヨ」
「うん、約束だ」

それからは、楽しくおしゃべりをしながら武州へ
向かい足を進めた。

数日後、武州へと着いた2人。江戸にはないのど
かさに神楽は心惹かれた。

「それじゃあ神楽ちゃん、パパちょっと仕事に
行ってくるね。あそこに神社が見えるでしょ?
お日様が沈む頃、あそこで合流しよう」
「うん、わかった」

仕事へ向かう父を手を振り見送る。
背中が見えなくなったところで、どう散策をし
ようかと作戦を練る。

とりあえず神社に腰掛けて考えよう。そう思い、
神社へと向かった。

人っ子1人いない神社の中、石段に腰を下ろした。
暖かな日射しと、心地よい風。そして、静かな
空間に酔いしれていると、1人の男の子に声を
かけられた。

「お前、この辺りじゃ見ない顔だな」

色素の薄いサラサラとした髪に、整った顔。口
振りと格好から推測するに、この男の子はこの
辺りに住んでいるのだろう。年は少し上だろうか。

「お父さんの仕事について来た……」
「ふ〜ん……それじゃ今暇してるってわけだ」

なんだかムッとしたため、「違うアル」と返し
顔を反らす。

「暇なくせに。ってかお前、アルってなんでィ」
「……そういう言葉を喋るんだヨ。そっちこそ、
語尾変アル」
「なっ!?俺だってこういう喋り方なんでィ!」

お互い、『不思議な奴』と笑いあった。

「ははっ、おもしれぇ…あ〜腹痛い。あとさ、
目の色も変わってるよな」

やはり触れられたか、と思った。
こんな瞳の色、他所では見られないから……

「私、夜兎なんだヨ。だからこんな目してるアル」
「……夜兎ってなんでィ」

顔にはてなマークを浮かべてこちらに聞いてくる。
純粋に気になるのだろう。
知ったら……どうなるのかな?バケモノ扱いされる
かな?うん、されるよね。
いろんなことを心の中で渦巻かせた。一呼吸
置いて答える。

「夜兎族っていうのは、人殺しの部族アル」

間違った言い方はしていない、はっきりそう
言える。

「人殺しって…オメー、そんなんじゃねぇだろ」
「私だって、いつかそうなるネ」

笑いながら、涙を堪える。

「夜兎ってすごいんだヨ。一番強い戦闘部族だし、
私だってまだ小さいけどそれなりに強いアル」

「恐ろしいダロ?」そう笑いかけると、
男の子はダンッと音をたてて立ち上がった。

「バケモノだ……」そう言われるのだろう……
そう思い、目を閉じた。
けれど、飛んできた言葉は意外なもので、
とても嬉しいものだった。

「すげぇな、お前。悔しいけどかっこいいじゃ
ねぇかィ」

初めてかけられた誉め言葉。耳を疑ったが、
男の子は隣に腰掛け直すと、「目の色も髪色も
好きだし、一番強い戦闘部族!やっぱ一番はこれ
だよなァ〜」と笑顔を咲かせながら語り出した。

「おい!」
「へっ?」

急に声をかけられたもので驚き、間抜けな声が
出てしまった。

「自分の力、堂々と誇れよな!俺も堂々と誇れる
ような力、絶対つけてやる。んで、いつか喧嘩
しようぜィ!!」

なんという地球人だろうと思った。こんな地球人も
いるのだなと、心が震えた。

「うん…ありがとネ。いつか、喧嘩しようナ。
ガチンコなやつ。約束アル」

そう微笑むと、男の子の顔が赤くなったような
気がした。なので、「顔赤いアルヨ」と言って
みた。そうすると、

「バッカじゃねぇの!?これはあれだよ、夕日!
夕日でさァ!!」

男の子が指差す方向を見てみると、綺麗な夕焼けが
広がっていた。

思わず、「綺麗……」と声に出してしまった。

「また、2人で見れればいいな、夕焼け」
「うん、そうアルナ」

「そろそろ帰らなくちゃ」と言い、男の子は
立ち上がった。

「また今度な!って…名前聞いてねぇや。俺、
沖田総悟」
「神楽アル。またナ、沖田!」

沖田、と言ったら、また顔が赤くなったように
見えた。これもまた夕日のせいなのですか?
まぁ、夕日のせいにしてあげよう。
走り去っていく沖田の姿を見ながらそう思う
神楽であった。

(か、神楽ちゃんったら…今のガキと何話して
たの…?
すごい楽しそうにしちゃって……彼氏なんて
認めませんからね!!)


ATOGAKI postscript
ずっと書きたかった幼少期時代のお話でした。
ここだけの話として楽しんでいただければ
幸いです。読み終えたらリセットしてください
ませ…(笑)

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