銀魂SS

□ハニカミ
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それは、何よりも眩しくて、煌めいている__



ギラギラと暑苦しい太陽の下、これまた暑苦しそう
な服を纏った少年が1人歩いていた。

「ったく、暑苦しいんでィこの隊服はよォ……」

愚痴を溢しながらも歩く足は止めない。
隊服もきちんと着ているところを見ると、今日は
何やら真面目に巡回に取り組んでいるようだ。
珍しいこともあるものだ。

「暑ィ……」と顔で言いながら歩いていると、駄菓
子屋の前で悩ましげな顔をしている明るいオレンジ
色をした髪を持つ少女を見つけた。

(少し休憩といくか……)

言っておく。これはあくまでも休憩だ。

「おい」と声をかけると、少女は振り返り、むっと
した顔をして「何アルか」と口を開いた。

「たまたま見掛けたんでねィ。それよりオメーこそ
何してんでィ」
「……アイス買いに来たアル。けど、20円足りな
くて食べたいやつが買えなくてナ。他のにするか
考えてたところネ」

そう言うと神楽は、先程にも増してものすごく険悪
な顔をし出した。
そんな神楽を見て、沖田は思わず「何が欲しいんだ
よ」と声をかけてしまった。
いつもならこんなことしないのに、と頭を掻く。

「今…なんて……?」

投げ掛けられた本人も、驚きのあまりこの状況を
飲み込めないでいた。

「どれが、欲しいんでィ……」

頑張ってポーカーフェイスを装い、もう一度ちゃん
と尋ねた。
神楽は、一気に押し寄せる驚きと嬉しさに流され
ないようにと唇を固く結んだ。そして、平常心を
取り戻すように「こ、これヨ……」と1つのアイ
スを指差した。

それはいちごミルクのアイスキャンディ。
あぁ、こいつらしいなと内心微笑む。

あり?なんで微笑ましいなんて思ってんの?
それに、こいつに奢ろうとする時点で俺おかしい。

何がどうしてしまったのか自分でも理解できなかっ
たが、嫌悪感は感じなかった。

「サド?」

神楽に呼び掛けられ、ハッと我に返る。

「どしたネ」
「いや、何でもねェ…それより、こいつでいいのか
?」

アイスを手に取り、神楽に確認をする。

「お、おう……」
「ん。そんじゃこれ、奢ってやるよ」
「へっ?」

なんと間抜けな声であろう。

「なんつー声出してんでィ」

ケラケラと笑われてしまった。しかし、今のは
自分でもおかしく思うので怒るのは控えることに
した。代わりに、少々あたらせてもらうことにし
よう。

「お前が奢るとか言うから変な声出しちゃったアル」

さぁ、どう返してくる?待ち構えていると
何も返って来なかった。は?と思い、沖田のほうを
チラッと覗いてみた。

腕で口元を覆い隠してはいたが、赤らめた頬は隠し
きれていなかった。

えっ?な、何アルかこの反応……!!

沖田の熱が移り、神楽もカァーっと頬を赤らめた。
両者とも無言のまま立ち尽くす。
このままの空気ではこの熱に負けてしまいそう、
そう思った神楽は「サ、サド!!」と口を開いた。
今度は声が裏返ってしまった。
しかし、沖田にツッコミを入れる余裕などなく、
「な、なんでィ」と返すだけで精一杯だった。

「奢って、くれるアルか……?」
「お、おう……」
「あ、あ……」

恥ずかしさのあまり、言葉が詰まる神楽。
一呼吸置いて、思いきって声に出した。

「ありがとナ……!」

ちゃんと言えた安心感と、恥ずかしさが神楽を襲う。
けれど、喜びや嬉しさというものは自然と人を笑顔
にするようで、神楽はニカッと歯をみせてはにかん
だ。

沖田はと言うと、アイスを一旦置き直すと膝を抱え
るようにしてしゃがみ込み、顔を伏せてしまった。

「サ、サド……?」

恐る恐る隣にしゃがみ込むと、沖田はボソりと呟い
た。

「すき」

その一言は、またしても2人に熱をもたらした。
先程までのものと比べものにもならないくらいの
熱を。

「サド……」
「うん」
「私も恋、したっぽい……」
「……誰に?」

そんなもの、聞くまでもなかろう……

「お前にアル。バカ」

沖田はむくりと顔をあげた。その顔は、子供みたい
に弾けた笑顔。

あぁ、本当に眩しいな。そして、どこまでも煌め
かしい__


ATOGAKI postscript
……書いてて楽しかったです。(自己満足)

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