日進月歩番外編

□蒼と脳
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俺は、体育会系の上下関係っていうやつが好きではない。














「ほらー、ボール拾いは1年の役目だぞー」










どうしてあの人たちは、1年先に生まれたからといってあんなに偉そうなのだろう。


ボール拾いだって、みんなでやれば早く片付くのに。



でも、そんなことは言えない。
言えば生意気だって、また走らされる。


先輩なんて面倒くさい。そう思ってた。





あの人に会うまではーー。
















『おい、大丈夫かお前。フラフラしてんぞ』







『俺がいくつか持つよ』と言ってその人は、俺の手にあるボールをとっていく。







「あ、ありがとうございます……」






その人を目に捉えた瞬間、俺は誰だかすぐにわかった。











この人W雪村怜Wさんだ。







彼のことは、入学前からクロによく聞かされていた。
凄く、ブロックの上手い人だって。








『あれ?もしかしてお前の名前って、孤爪っていう?』

「えっ、はい。そうですけど……」






どうして雪村さんは、俺の名前を知っているのだろう。
まだ、入部して間もないのに……。








『やっぱり!鉄朗から話は聞いてるよ。俺は雪村怜、2年生だ。よろしく』

「は、はい……。よろしくお願いします、雪村先輩」

『別に無理して敬語使う必要ないぜ。上下関係みたいなの苦手なんだろ?俺、別にそういうの気にしないし。ちなみに、部内ではユキって呼ばれてる』






そう言って笑う雪村さんに、俺は驚いた。





この人は、他の人とは全然違う。
威圧感みたいなものもない。







「じゃあ、ユキって呼んでもいいの……?」

『おう、かまわねえよ。俺も研磨って呼んでいいか?そっちの方が言いやすいし』

「うん。いいよ」

『そっか。では改めて……これからよろしく研磨!』





差し出してきた彼の手を、俺は握る。






「こちらこそよろしく。ユキ」









そういえば、クロが言ってたな……。



部で最初に仲良くなる年上の人間は、ユキだろう。基本的にあいつは落ち着いた性格だからって。



クロの言葉は本当だったなって思う。



ユキの隣は、なんとなく心地いい。
自主練とか面倒くさいし、疲れるからヤダけど……。
ユキのためならいいかなって思う。



彼にトスを上げることに、どこか楽しみにしている自分がいた。








早く、ユキと同じコートに立ってみたいな……。
























蒼と脳
(研磨、ちょっとトス上げてくれ)
(……少しだけなら)
(研磨が自主練に付き合っている、だと……!)
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