日進月歩番外編

□憧れの存在
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そう、これは怜を除くバレー部全員が、一度は思ったことだーー。


































「そういえば、ユキさんってどうして音駒に来たんですか?」





練習終了後、部室で制服に着替えていると、虎がいきなりそんなことを聞いてきた。






「あっ、ソレ俺も気になってました!」





横からリエーフまでもがやってきた。



俺が音駒に来た理由か……。



気がつくと、他の奴らも自分の手を止めて俺の答えを待っていた。
みんななんでそんなに気になるんだ……?








『別にたいした理由はねえよ。音駒が一番家から近かった。ただそれだけだ』





一番の理由はそれだ。音駒だと、家から歩いてこれる距離だからな。

まあ、実はもう一つ理由があったりするがそれは言わないでおこう。









「でも、お前ほどの実力者なら強豪校からの推薦もあったダロ」

『一応、いろんなところから貰ってはいたよ』

「えっ!マジっすか!ちなみにどんなところから貰ってたんですか?」





W推薦Wという単語に、虎が反応を示した。
その目が輝いていることから、ああ、これは言わないといけない感じだな……。と思う。







『お前が知っている高校だと、梟谷とか、井闥山学院だな。あと県外からも数校。宮城の白鳥沢とかからもきたよ』

「え''っ、白鳥沢からも来たんですか!?」






虎の顔は明らかにびっくりしていた。

横にいるリエーフは「白鳥沢ってドコですか?」と言っている。まあ、こいつは論外だ。





W白鳥沢Wその単語で思い出すのは、牛島のこと。今や、全国で3本の指に入るスパイカー。
中3以来会ってないけど、スパイクかなり強くなっているんだろうなあ。








「おーし、そろそろ帰んぞー」





鉄朗の声に、ハッと現実に引き戻される。

ヤバイヤバイ、あいつらに置いていかれちまう。
俺たちは慌てて、部室を出た。







































そんな帰り道、鉄朗と研磨とで歩いていたら鉄朗が俺に聞いてきた。








「ーーで、本当のところどうなんだ?音駒に来た理由」






驚いて鉄朗の方を見る。そんな鉄朗はニヤニヤした表情をしていた。
研磨も少しだけ興味深そうにしている。



まいったな。こいつらには見透かされていたか。







『絶対、他の奴らには言うなよ。特に衛輔には』

「わかってるって」

「うん」





鉄朗と研磨の返事を聞いて、俺は話し出す。









『音駒に来たのは家から近いのと、あと衛輔が音駒に入るって噂で聞いたからだ』







夜久衛輔。全中の予選であいつの試合を見たとき、衝撃を受けた。

当時レシーブが苦手だった俺にとって、衛輔のレシーブ力の高さは憧れだった。
対戦することはなかったが、チームメイトから衛輔が音駒に行くって噂を聞いて、迷わす音駒に進学することを決めた。


夜久衛輔という男に、背中を預けたいと思ったのだ。











『だから、音駒に行くことにしたんだ』





一通り話したあと、鉄朗が「ふーん」
と相づちを打つ。横にいる研磨も「へー」と言っている。







「それでか。1年のときに、夜久にレシーブを教わっていたのは」





鉄朗の言葉に、俺は苦笑する。


1年生のとき、俺はずっと衛輔にレシーブを教わりに行っていた。
初めは衛輔もびっくりしていたけど、だんだん仲良くなってきて、今では親友とまで呼べる間柄になった。

そして衛輔の特訓のおかげで、音駒で通用するレシーブ力を身につけることができたのだ。







「本当、お前って夜久のこと大好きだよな」

『うっせ』






ニヤニヤしている鉄朗の腹に、パンチを入れる。
「う''っ」と声が聞こえたが、無視だ無視。


夜空を見上げて思う。














今でも、衛輔が憧れのレシーバーであることに変わりわないよ。





























憧れの存在
(ちょっとは手加減しろよユキ)
(茶化すお前が悪い)
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